英中銀、政策金利と量的金融緩和(QE)規模を据え置き

経済

2020/8/7 9:56

<チェックポイント>

●失業率は年末までに7.5%に上昇―21年初めから徐々に低下と予想

●経済成長率は21年7-9月期から前期比でプラスに転じると予想

●マイナス金利、予断を持たず議論―市場は段階的にゼロ金利、マイナス金利転換を予想

 イングランド銀行(BOE、英中銀)は6日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を過去最低の0.10%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。また、非伝統的な金融緩和措置である量的金融緩和(QE)の規模を年末までの時限で1000億ポンド追加増額し、総額7450億ポンドとする方針も据え置いた。

 BOEは3月19日の臨時会合でQEの規模を2000億ポンド増額し、総額6450億ポンドとしたが、前回6月会合で、20年の英国経済が大幅なマイナス成長となり、失業者の急増が長期化する見通しや、デフレ(物価下落)懸念が一段と強まったことから、QE規模を7450億ポンドに拡大している。

 BOEは会合後の声明文で、「最新の経済予測は新型コロナによる英国経済への直接的な影響は経済予測期間中、徐々に消失することを前提としている」と指摘。また、「世界経済の活動は19年10-12月期の水準を依然下回っているものの、ここ数カ月は持ち直している」とし、国内外の景気回復の動きが改善していることを強調している。

 BOEは景気見通しについては、前回6月会合時と同様、「英国や世界各国の経済の先行きはパンデミック(感染症の世界的流行)の進展や感染防止策、政府や企業、家計の動向に強く左右されるため、不透明だ」としたが、「消費が4月を底に回復してきた。7月の個人消費は20年初めの水準から10%弱下回る水準に回復した。住宅市場も通常に近い水準に戻っている」と付言している。特に4-6月期GDP(国内総生産)伸び率が前期比マイナス20%と、前回予測のマイナス28%から改善しており、BOEはパンデミックからの景気回復が想定以上に早いと見ている。

 失業率については、「パンデミックで一時帰休していた多くの労働者はすでに職場に復帰した」としたが、20年末時点で約7%にまで上昇すると予想している。

 景気予測については、「21年末までGDP伸び率は19年10-12月期の前期比横ばいを超えないとしている。景気見通しに対するリスクは下ブレだ」としている。

 インフレ見通しについては、「インフレ率はパンデミックにより、6月は前年比0.6%上昇と、5月の同0.5%上昇を上回ったが、年内はパンデミックによる直接、また間接の影響(VAT税率引き下げを含む)を受け、平均で0.25%上昇となり、物価目標(2%上昇)を大きく下回る見通し」と予想している。ただ、その後、「経済予測によると、経済の余剰生産能力(spare capacity)が低下することにより、国内物価の上昇圧力が徐々に高まり、インフレ率は2年後、約2%上昇に加速する」としている。

 今後の金融政策については、「われわれは余剰生産能力(過剰設備)がなくなり、インフレ率が物価目標(2%上昇)を達成するまで金融引き締め(利上げ、またはQE規模の縮小)は行わない」としている。

 また、市場ではBOEがマイナス金利を導入するかどうかに注目している。BOEのアンドリュー・ベイリー総裁はマイナス金利について議論していることを認めており、マイナス金利政策に対し、予断を持たずにオープンなスタンスを取っている。しかし、マイナス金利は結果的に銀行の貸し出しを阻害する可能性が高いなどの問題が少なくない。それでも金利先物市場ではマイナス金利に転換するのは今ではなく、BOEはその前にゼロ金利を21年3月までに導入すると織り込んでいる。

 BOEの次回会合は9月17日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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