<新興国eye>トルコ中銀、政策金利据え置き―3会合連続

新興国

2020/8/21 11:18

 トルコ中央銀行は20日、新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界的流行)によるトルコ経済への悪影響を抑制し、景気回復を強めるためにはディスインフレ・プロセス(インフレの低下基調)の維持が重要と判断し、主要政策金利である1週間物レポ金利を現状の8.25%に据え置くことを決めた。市場予想通りだった。

 中銀はパンデミック前の19年7月、景気刺激を狙って15年2月以来4年5カ月ぶりに利下げ(4.25ポイント)に踏み切り、20年2月まで下げ幅を縮めながら利下げを継続。その後、パンデミックが発生し、トルコ経済への悪影響が強まったことを受け、景気支援のため、5月まで連続の利下げを決めた。19年7月から利下げ幅が計15.75ポイント、年初来では3.75ポイントに達したことから、ディスインフレ・プロセスを維持するにはこれ以上の利下げは不要と判断し、6月会合から据え置きを決めている。据え置きはこれで3会合連続。

 政策金利を据え置いたことについて中銀は、「トルコ経済は5月からロックダウン(都市封鎖)の緩和により経済活動が再開され、景気回復の勢いが増している」とした上で、前回会合時と同様、「これまでのわれわれによるパンデミックの悪影響を抑制することを狙った金融緩和政策と政府による財政刺激政策は潜在的供給を支え、金融市場の安定や景気回復に寄与している」との認識を示した。また、「(通貨リラ安の進行がインフレ上昇を招くため、リラ安の阻止を狙った)最近の流動性対策が金融の安定に役立つと判断した」としている。

 この流動性対策は、中銀が11日に公開市場操作(オペ)を通じたプライマリーディーラー(中銀との直接取引を認められた政府証券公認ディーラー)へのリラ建ての流動性供給の上限をゼロ%に引き下げたもので、通貨リラが対ドルでの下落(リラ安)の進行を阻止することが狙い。リラ安は輸入物価を押し上げ、インフレを加速する要因となるため、中銀が重視しているディスインフレ・プロセスを維持するためにはリラ安の進行を阻止する必要があるからだ。

 市場では今回の措置により、中銀のリラ建ての資金調達金利が加重平均で政策金利(8.25%)を上回る9.75%に上昇すると見ており、中銀はこれにより、事実上の金融引き締めに転換した。

 また、前回7月会合時と同様、「経済活動の正常化プロセスが続くことにより、これまでパンデミックによる経済活動の自粛によって広がっていたサプライチェーン(部品供給網)の寸断は今後、徐々に解消される」とした上で、ディスインフレ(物価上昇率の鈍化)の傾向が今後強まる、との見方を据え置いた。

 ただ、「パンデミックの進展次第で、国内や海外の需要状況の先行きが依然、かなり不透明となっている」とし、今後、インフレが上ブレる可能性を指摘。この点について中銀は、「流動性対策を継続しながら、政策金利の現状維持を決めた」としている。

 さらに、「ディスインフレのプロセスを維持するには、今後、慎重な金融政策運営が必要となる。こうした観点から、金融政策のスタンスはディスインフレのプロセスが続くようコアインフレ率の指標をよく見て決められ、物価と金融市場の安定を目指し、あらゆる手段を講じていく」とし、行き過ぎた利下げによりインフレ上昇リスクが高まらないよう慎重な金融政策が必要との考えを示した。

 次回の金融政策決定会合は9月24日に開かれる予定。

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 iS新興国<1362.T>、上場MSエマ<1681.T>

提供:モーニングスター社

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