パウエルFRB議長、ジャクソンホール講演で講演―2%超物価上昇容認へ

<チェックポイント>

●物価目標の達成手法を「平均インフレ目標政策(AIT)」に変更

●雇用最大化は失業率だけでなく、広範囲で包括的に捉える手法に修正―FRB特別声明

●FRBは長期にわたりゼロ政策金利を維持―市場観測

 パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は27日、主要国の中銀総裁ら金融当局や大手金融機関のトップが参加して米ワイオミング州ジャクソンホールで毎年1回開かれるカンザスシティー連銀主催の国際経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で、オンライン配信を通じて講演した。この中で、インフレ率が長期間、物価目標の2%上昇を大きく下回っている現状を踏まえ、金融政策の枠組みを修正し、一定期間の平均でインフレ率を物価目標に収束させる、いわゆる「平均インフレ目標政策(AIT)」を採用する方針を明らかにした。

 パウエル議長は講演で、「低インフレが執拗に続いていることが心配の種となっている。これは重大な経済悪化リスクとなり、期待インフレ率を低下させる悪循環となりうる。また、これは景気が悪化したとき、利下げのスコープ(効果が及ぶ範囲)を狭める」とした上で、「インフレ率がある一定の期間で、物価目標の2%上昇を適度にオーバーシュートする(上回る)ことにより、平均で物価目標水準を達成することを容認する」と述べ、AITに転換する考えを示した。

 FRBはこれまでインフレ率を中期的に物価目標の上限とみなし、これを超えないよう物価目標を達成する、いわゆる「物価水準目標政策(PLT)」を採用してきたが、今後はAITに転換することにより、長期にわたり政策金利をゼロ金利水準で維持しながら一定期間中、インフレ率が物価目標をオーバーシュートさせていく。AITはインフレ率が現在のように物価目標を大きく下回っているときは、インフレ率が将来的に物価水準目標を上回るようにし、一定期間の平均で物価目標を達成させる手法だ。

 一方、FRBは同日、議長講演に合わせ特別声明を発表し、FOMC(米連邦公開市場委員会)が全員一致で12年1月に公表した「長期的な目標と金融政策戦略」の修正案を承認したことを明らかにした。FRBは同戦略で、FRBの使命である物価安定と雇用最大化の責務に最も整合的と判断したインフレ率の長期的な達成目標を2%上昇に設定している。また、「この10年間の経済状況の変化をいかに金融政策に反映するかの観点から(金融政策の枠組み)を見直した」とした上で、「政策決定担当者は物価目標の達成に関するFOMCの戦略を新たに生じた困難な問題にうまく適合させる必要がある」と述べている。

 具体的には、物価の安定について、「ある一定の期間で、インフレ率が平均で2%上昇の目標達成を目指す戦略に修正した」とAITへの転換を明示した。また、雇用の最大化については、「従来のように完全雇用からどれだけ失業率がカイ離しているかにだけ焦点を置かず、今後は広範囲で包括的に捉えるように修正した」としている。

 インフレ率のオーバーシュートを容認する「ある一定の期間」について、パウエル議長は講演後、参加者からの質疑応答で、「われわれはインフレ率が適度に物価目標の水準をオーバーシュートすることについて議論している。これはオーバーシュートを恒久的に、または、長期間維持すること意味していない」とあくまで一時的なオーバーシュートを容認するとしている。

 FRBが物価目標の達成で最も重視しているインフレ率である、コアPCE(個人消費支出)物価指数が6月は前年比0.9%上昇と、5月の同1.0%上昇を下回ったことを受け、市場では早い時期からFRBは次回9月15-16日開催FOMCでAITを導入すると予想していた。今回、パウエル議長が講演でAITに言及したことにより、その可能性はかなり高いとみている。また、市場では、FRBは完全雇用とインフレ率のオーバーシュートを確実にするため、長期にわたりゼロ金利政策を維持するとみている。一部では、今後、FRBがさらに強力な金融緩和政策を講じる可能性が高まり、その結果、米経済は数年間、潜在成長率を超える高い伸びが続くと見ている。

 これを受け、米株市場ではFRBがAITにより超低金利政策を長期にわたって維持するとの見方が広がり、27日のダウ工業株30種平均は続伸した。

提供:モーニングスター社

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