英中銀、政策金利と量的緩和規模を維持―10-12月期からマイナス金利運用の協議開始
2020/9/18 10:04
<チェックポイント>
●「英EU離脱や新型コロナ感染再拡大で景気下ブレリスクがある」と指摘
●「地域的ロックダウン再開による経済活動の停滞で高い失業率が続く」と予想
●BOEは21年5月までにゼロ金利、その後マイナス金利に転換―市場観測
イングランド銀行(BOE、英中銀)は17日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を過去最低水準の0.10%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。
6月会合で20年末までの時限で1000億ポンド増額した総額7450億ポンドの量的金融緩和(QE)の規模も据え置いたが、会合後に発表されたMPC議事抄録によると、「21年初めにはQEによるわれわれの資産買い入れ額(バランスシート)が上限の7450億ポンドに達する」と予想し、「QEは予定通り20年末で終了する」と考えていることが明らかになった。
一方、議事抄録によると、「9月16日時点で資産買い入れ額は6840億ポンドと、上限の92%に達した」としており、市場ではQEが12月末に終了する前に買い入れ枠が増額されると予想している。BOEの資産買い入れは、下期(7-12月)の失業者増大やデフレの長期化に対処するための景気刺激だけではなく、新型コロナウイルス感染症危機対策で政府が多額の財政支出を余儀なくされ、BOEの国債買い入れの追加増額によって、国債が市場でだぶつくのを防ぐ狙いがあると見ている。
また、前回会合で公表された8月四半期金融政策報告書では、「世界経済は19年10-12月期の水準を依然下回っているものの、ここ数カ月、強まっている」とし、国内外の景気回復の動きが改善していることを強調したが、今回の会合では、「英国経済の見通しは依然として著しく不確実だ」と大きくトーンダウンした。
これは最近になって英国内で新型コロナの新規感染者数が1日当たり3000人超と、急増傾向にあり、マンチェスター都市圏など多くの地域でロックダウン(都市封鎖)が再導入による経済活動への悪影響や、ブレグジット(英EU離脱)の自由貿易協定(FTA)協議難航でノートレードディール(FTA合意なしのEU離脱)の可能性が高まってきていることを受けたものだ。
英国経済の見通しに対するリスクついては、「最近の国内経済データは8月四半期金融政策報告書で予測されたものよりもやや強くなっているが、ブレグジットや新型コロナの感染第2波というリスクを考慮すると、さらに経済が良くなるかは不透明だ」と下ブレリスクがあるとしている。
さらに、「英国各地で地域的なロックダウンが再導入されており、これが経済活動を下押しする。従来の予測よりも高い失業率が続くリスクがある」としている。
金融政策の見通しについては、「2%上昇の物価目標が持続的に達成されるか、または、経済全体の余剰生産能力が著しく失われない限り、金融引き締めは行わない」と当面は低金利政策を据え置く考えを示している。
議事抄録は、MPCが8月四半期金融政策報告書で、マイナス金利の有効性について議論していたことを明らかにした。これはパンデミックの再拡大の勢いが増してきたことや失業危機が間近に迫ってきたことが背景にあり、市場に対する明確なメッセージとなっている。
また、「われわれと金融監督当局である健全性規制機構(PRA)が20年第4四半期(10-12月)から運用上の留意点について検討を開始する」としている。これを受け、17日の金利先物市場では、21年5月に政策金利が0.10ポイント引き下げられ、ゼロ金利になる確率が上昇したとの見方が広がった。
インフレ見通しについては、「インフレ率は政府の外食支援キャンペーンやVAT(付加価値税)減税により、8月は前年比0.2%上昇と、7月の同1%上昇から急低下した。インフレ率は21年初めまで物価目標(2%上昇)をかなり下回る1%上昇未満となる」と予想している。
BOEの次回会合は11月5日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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