米8月中古住宅販売件数、前月比2.4%増の年率600万戸―市場予想通り

経済

2020/9/23 10:24

<チェックポイント>

●販売件数、3カ月連続で増加―伸び鈍化でもパンデミック前の水準超える

●販売価格(中央値)は前月比1.7%上昇の31万600ドル―前年比でも大幅上昇と高水準

●未販売住宅(在庫)は3カ月分相当―供給不足続く

 NAR(全米不動産業協会)が22日発表した8月中古住宅販売件数(季節調整済み)は、前月比2.4%増の年率換算600万戸と、過去最大の伸びとなった7月の同24.7%増から伸びが鈍化したものの、3カ月連続で増加した。新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界的流行)で多くの州が外出制限など経済活動の規制を再開したことや、労働形態もオンラインで日常業務を行うテレワークにシフトし、住宅購入需要が増え始めたこと、さらに住宅ローン金利が過去最低水準にあることが背景にある。

 水準的にも06年12月以来約14年ぶりの高水準となり、市場予想の600万戸と一致。パンデミック前の2月水準(576万戸)を上回ったほか、季節要因を無視できる前年比も10.5%増と、2カ月連続で上回った。

 8月販売件数の大幅改善について、NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、「中古住宅の販売は好調を維持しているほか、住宅ローン金利が年率3%近くで推移しており、雇用回復も続いていることから年内まで一段の販売増加が続く」と見ている。

 地域別販売件数を見ると、全米4地区のすべてで増加した。特に北東部は前月比13.8%増(前年比5.7%増)の74万戸と大幅増加となった。全体の4割以上を占め最もウエートが大きい南部はハリケーン被害の悪影響を受け、同0.8%増(同13%増)の260万戸にとどまった。中西部は同1.4%増(同9.3%増)の141万戸、西部はカリフォルニア州の山火事の悪影響で同0.8%増(同9.6%増)の125万戸だった。

 住宅供給の過不足感を示す8月時点の未販売住宅(在庫)は前月比0.7%減の149万戸と、7月の同2.6%減に続いて3カ月連続の減少となり、同月の販売ペースに換算した在庫水準も3カ月分と、7月の3.1カ月分を下回った。適正水準とされる6カ月分を下回っており、住宅供給不足の状況が住宅販売の足かせとなっている。

 これはパンデミックの影響を受け、中古市場への売り出し物件が減少していることに加え、建築用木材の価格急騰やカリフォルニア州の山火事で木材の供給が減少しているためで、住宅購入者の選択の余地を狭め、住宅価格の高騰要因にもなっている。前出のヤン氏は、「需要は旺盛な一方で、住宅供給が足りず、需要に追い付いていない。こうしたアンバランス(供給不足)は住宅購入者のアフォーダビリティー(住宅取得能力)を損ない、住宅購入を抑制するため、もっと多くの新築住宅を建てる必要がある」と懸念を示している。

 また、中古住宅の販売ペースをみると、販売物件が8月中に市場に残っていた期間は22日間と、前月と変わらなかったが、1年前の31日間から短期化した。

 中古住宅価格は住宅供給不足を反映し、中央値で前月比1.7%上昇の31万600ドルと、3カ月連続で上昇した。前年比も11.4%上昇と、高い伸びとなり、102カ月連続で前年水準を上回っている。31万ドルを超えたのはこれが初めてで、予算が限られた低・中所得の住宅購入者にとっては頭痛の種だ。主力の一戸建ても同様で、8月は前年水準より11.7%高い31万5000ドルとなった。

 住宅価格が低下しない要因の1つに、格安なフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件やショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)物件などのディストレスト物件の供給が依然細っていることがある。8月のディストレスト物件の販売比率は1%弱と、前月の1%弱と変わらなかったが、1年前の2%を下回っている。

 一方、住宅供給不足と高水準の住宅価格が続く中、8月の新規住宅取得者の比率は33%と、7月の34%を下回った。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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