【株式新聞・総力配信】ノーベル賞シーズン到来!―注目候補と関連株を先取り(後編)

株式

2020/9/23 11:31

 前編では、ノーベル賞レースにおける京都大学卒の逆襲に着目した。また、有力候補を絞り込む上で重視されているのが、「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」だ。各分野で一定以上引用された学術論文をベースに、研究への貢献度などから世界トップクラスの研究者を選び出すもので、受賞者の多くが後にノーベル賞を獲得している。

<坂口、森、北川3氏に注目>

 そこで、京大卒かつクラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞に輝いたことがある研究者に注目した。浮かび上がったのは、大阪大学の坂口志文特任教授(医学生理学)、京大の森和俊教授(同)、北川進教授(化学賞)の3人だ。

 坂口教授の研究領域は免疫学や分子生物学で「制御性T細胞」の発見者として世界的に知られている。6月には、過去に本庶佑京大特任教授や北里大学の大村智特別栄誉教授といったノーベル賞受賞者にも贈られている「ロベルト・コッホ賞」に選ばれた。

 制御性T細胞は、人間の体の中で起きる免疫反応が過剰にならないように抑制する働きを持つ。この発見により、制御性T細胞を悪用して免疫系による攻撃から逃れるがん細胞の特徴が解明された。2018年に同じ免疫・がん治療分野の研究で本庶京大教授が受賞してから間もないが、ノーベル賞クラスの功績であることは間違いない。

 このテーマに関しては、坂口教授らが設立したベンチャーで、iPS細胞から再生したT細胞によるがん治療の確立を目指すレグセル社がカギを握る。レグセルには、富士フイルムホールディングス<4901.T>をはじめSCREENホールディングス<7735.T>、東邦ホールディングス<8129.T>、フューチャーベンチャーキャピタル<8462.T>が出資している。塩野義製薬<4507.T>は、がん向けの「制御性T細胞阻害剤」が22年3月期にも臨床試験の第1段階に入る見通しだ。

<アステラス薬など浮上、小型のニックスも>

 クラリベイト・アナリティクスが19年に、ノーベル賞をめぐる「注目すべき日本人」に挙げた森教授は、細胞内の「小胞体」が異常なたんぱく質の蓄積を防ぐ「小胞体ストレス応答」を解き明かした。細胞内に網目のように張り巡らされた器官「小胞体」が、たんぱく質を管理する現象だ。この仕組みによって、病気が防がれていることが分かった。

 森教授は、14年にノーベル賞への登竜門とされる「ラスカー賞」を受賞した。関連株ではアステラス製薬<4503.T>が、小胞体ストレス応答を調節する創薬の研究を米バイオベンチャーと進めている。

 化学賞が期待される北川教授は、「多孔性金属錯体(PCP)」を開発した。PCPは金属やプラスチックと同じ高分子材料の一つで、極小の穴が幾つも開いたスポンジ状の構造が特徴だ。気体を効率的に吸着する性質を持ち、ガスの分離や貯蔵の技術にも役立つほか、産業用の高機能素材から医療、物流まで幅広い分野での応用が見込まれる。

 PCPの有効利用を目指すベンチャーで、北川教授がアドバイザーを務めているアトミス社には、SBIホールディングス<8473.T>系のSBIインベストメントと三井金属<5706.T>が共同設立したファンドが出資している。

 さらに、小型株ではニックス<4243.T>がアトミスと組み、射出成形の際に発生するガスをPCPによって抑制する技術を開発している。値動きの軽さからみて、仮に北川教授がノーベル賞を受賞すれば相場の沸騰が必至とみられる。

<平和賞、文学賞の行方は?>

 平和賞は今回も環境保護活動家のグレタ・トゥーンベリさんが有力候補となっている。実現すれば、レノバ<9519.T>やイーレックス<9517.T>といった再生可能エネルギー関連や、海洋プラスチックごみ(廃プラ)問題の解決につながる生分解プラスチックのカネカ<4118.T>、エコバッグのトランザクション<7818.T>などが物色される可能性がある。

 国民を新型コロナウイルスから守ったニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相も注目される。自ら育児休暇を取得するなど女性活躍社会をリードする存在だけに、「なでしこ銘柄」の資生堂<4911.T>あたりに関心が向かうかもしれない。

 文学賞は、なんといっても「世界の村上春樹」だ。大江健三郎さんが受賞した1990年代以降、アジア文学からは00年代の高行健さん(仏国籍だが作品は中国語)、10年代の莫言さん(中国)と1人ずつノーベル賞作家が誕生している(17年のカズオ・イシグロさんは英文学)。新たな年代に入ったことは、村上さんにとって好材料とも考えられる。書店株のほか、中古書籍のブックオフグループホールディングス<9278.T>もマークしたい。

提供:モーニングスター社

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