<新興国eye>ADB20年アジア経済見通し―カンボジアもマイナス成長

新興国

2020/10/2 10:48

 アジア開発銀行(ADB)は、9月15日に「アジア経済見通し2020年改訂版」を発表し、アジア諸国の成長率予測を大きく引き下げました。4月3日に発行していたアジア経済見通し2020年および6月18日発行の補足版を改訂したものです。

 ADBでは、「20年のアジアの開発途上国経済は、約60年ぶりにマイナス成長となるものの、この地域が新型コロナウイルスのパンデミックによる経済の悪化からの回復の兆しが見えることから、21年には回復が見込まれる」として、日本などの先進国を除くアジア地域の20年の成長率をマイナス0.7%(4月予測2.2%、6月予測0.1%)に引き下げる一方、21年は6.8%(4月6.2%、6月6.2%)に引き上げました。

 カンボジアについては、新型コロナの影響は大きいものの第2四半期に縫製以外の輸出が健闘しているとして、20年のGDP(国内総生産)成長率をマイナス4.0%(4月予想2.3%、6月予想マイナス5.5%)へと若干戻しました。

 新型コロナで打撃を受けている縫製業は欧米向け輸出が減少しているものの、自転車や電気機器等、縫製以外の品目の輸出が20年上半期に対前年同期比30.3%増をと大きく伸びたこともあり、第二次産業の成長率は5.1%となると見ています。海外からの観光客がほとんどゼロとなっている観光業は、3000社が廃業、4万5000人が失業・一時帰休となっています。このため第三次産業の成長率はマイナス15.1%にまで落ち込むと予測しました。また、20年上半期の農産物の輸出が対前年同期比17.1%増となったこともあり、第一次産業の成長率は2.0%となると見ています。21年のGDP成長率は、5.9%(4月5.7%、6月5.9%)にまで回復すると見ています。

 物価上昇率予測は、20年2.1%(4月予想2.1%、6月予想2.1%)、21年1.8%(4月1.8%、6月1.8%)と変更なしで、安定的と見ています。貿易収支については、経常収支の赤字(対GDP比)が20年22.3%(4月19.0%)、21年17.8%(4月16.9%)に拡大すると見ています。

 リスクとしては、縫製業、建設業の予想以上の落ち込み、消費需要の抑制等があげられています。また、金融の安定性への影響や外貨準備の減少も懸念されるとしています。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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