<中原圭介の相場観>米国株はバブルなのか? 新参の個人投資家が株価を押し上げ

コラム

2020/10/7 16:10

 米国を筆頭に企業・家計が現金・預金の形で持つマネーの量が急膨張している。米国では7月に、「M2(現金・銀行預金など)」と呼ばれる代表的な指標が前年同月比で23.3%増と、1960年以降で最も高い伸びを記録した。失業給付の上乗せに加えて、中小企業向けの給与肩代わりが押し上げている。

 日本でも8月に、M2が前年同月比で8.6%増え30年ぶりの伸びとなった。日米で財政出動によるマネーが家計や企業の銀行口座に入金され、M2は大きく膨らんだものの、問題は市中のマネーの量である「マネーストック」が伸びていないことだ。

 これは、景気が急激に悪化する中で企業・家計に政府から与えられたマネーが設備投資や消費に回っていないことを示している。その結果としてカネ余りが生じ、給付の一部が株式市場に流れ込んでいる。

 顕著なのが米国だ。失業が急増しているなかで、暇な時間と増えた現金で株式投資を始める個人が大幅に増えているのだ。いわゆる「ロビンフッダー」の買いに象徴されるように、一部のハイテク株が集中的に買い上げられ、給付金バブルともいえる現象を起こした。米国ほどではないが、日本でもネット証券の口座開設が3月以降急増するなど、投資をする人々が増えているようだ。

業績に裏付けはあるが…

 米国株はバブルなのであろうか。代表的な株価指数のS&P500のPERは24倍程度となり、2000年のITバブル時のピークだった26倍に近づいてきた。とりわけアップル<AAPL>は3月末から足元の高値まで2倍超、テスラ<TSLA>は5倍超に高騰した。

 ただ、ITバブル当時と異なるのは、「GAFA」に代表される巨大ハイテク企業の業績に落ち込みはみられないことだ。そのため、PERの上昇は見込めなくてもFRB(米連邦準備制度理事会)のゼロ金利が続けば、PERが大きく低下することは考えにくいという意見が多い。

 確かに、ハイテク需要のバロメーターとなる半導体売上高をみると、00年の景気後退期では半導体売上高がピークから半分近くに減ったが、今回のコロナ下ではわずかしか減っていない。その意味では、ハイテク株はバブルとはいえないかもしれない。

そろそろ警戒すべき段階に

 そうはいっても、カネ余りが株価を押し上げていることに変わりはない。株価が「プチバブル」の状態にあるという認識は持っておきたいところだ。足元では米国のハイテク株がスピード調整し、その後の株価は戻してきているが、同じような調整がいつ再び起こってもおかしくない。

 コロナ下では機関投資家より個人投資家の方が相場に大きな影響を及ぼす可能性が高い。米国では個人の売買比率が40%に達し、リーマン・ショック直後と比べて15ポイントも上昇した。日本でもその比率は30%近くまで切り上がり、特に新規参加者が活発に取引しているようだ。個人投資家の動きには、これまで以上に注意が必要だろう。

 米国でも日本でも新参の個人投資家はまだ1度も、本当の意味で恐い思いをしたことがない。そのせいか、信用取引に手を出すケースも増え始めているようだ。東証が発表した10月2日時点の個人投資家の信用買い残は2兆4815億円と、1年8カ月ぶりの高水準となっている。

 日米ともに今の株価は、経済活動が元に戻った後の利益を織り込んでいる。その一方で、金融緩和の後押しでリスクを過大に取る個人投資家の動きは衰える気配がない。彼らのマネーが含み損によって逆回転し始めると、新興市場に大波乱をもたらすかもしれないので、そろそろ警戒すべき段階に入ってきているといえるだろう。

(アセットベストパートナーズ 中原圭介)

(写真:123RF)

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