海外株式見通し=米国、香港

新興国

米国株式

2020/10/15 17:30

米国株:トランプ大統領再選ならグロース有利、「ポストGAFA」行方に注目

 大統領選投票日に向け、第1回討論会およびトランプ大統領の新型コロナウイルス感染後も世論調査は民主党のバイデン候補がリードを広げている。金融マーケットはバイデン候補圧勝での早期決着を織り込み、大規模な財政支出パッケージと景気刺激策の実施を期待。米国債利回りが上昇し、為替はドル指数低下という反応を示した。

 株式市場では、民主党の景気刺激策による恩恵を受けそうな景気敏感株が買われやすい一方、増税と長期金利上昇により、将来の税引き後利益を金利で割り引いた現在価値の低下がより大きくなりそうな大型ハイテク銘柄などのグロース株は逆風を受けることが想定される。反対に、トランプ大統領再選により減税政策が続くならば、グロース株への追い風が続くと考えられる。

 10月13日から米主要企業の7~9月期決算発表が始まった。9日時点のファクトセットによれば、同期のS&P500構成企業の1株利益の市場予想は前年同期比20.5%減と、2009年4~6月期以来の大幅減少を見込んでいる。ただし、今年6月末時点の見通し(同25.3%減)からは改善した。

 7月以降の中国経済の改善ペース加速がプラスに働いた企業があるとみられる一方、連邦政府による失業給付金上乗せが7月末に失効したことなどの悪影響が当面の逆風となるかもしれない。

 個別では、IBM<IBM>がITインフラサービス部門を21年末までに別会社として分離・上場させる計画を8日に発表した。同社は、オープンソースのOS(基本ソフト)を取り扱うレッドハット<RHT>を買収して以降、異なる環境のクラウドを統合する「ハイブリッド・クラウド戦略」を進めてきた。

 自社の豊富な業務ソフト群を異なるクラウド環境で使えるようになれば、同分野で抜きん出る可能性がある。巨大IT企業の支配力抑制を目指す動きが米議会で強まる中、今後の「ポストGAFA」候補をめぐる企業の動きにも注目が集まる。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

香港株:地方政府の専項債「新基建」加速、債務GDP比率は許容範囲

 次世代インフラ建設を意味する「新基建」の加速を受け、中国の粗鋼生産や建機販売が活況を呈している。世界鉄鋼協会のまとめによると、今年8月の粗鋼生産量は前年同月比8.4%増の9485万トンとなり、7月の9336万トン(同9.1%増)を上回って2カ月連続で過去最多を更新。また、中国工程機械工業協会によると、主要建機メーカー25社が8月に販売した油圧ショベルは、同51.3%増の2万393台に達した。

 そうした中、地方政府専項債の起債額が急増している。専項債とは収益性の出る公共事業などインフラ整備を目的とした特別地方債、レベニュー債のこと。15年に初めて起債された際の起債額は1000億元(約1兆5600億円)だったが、18年には1.35兆元に達し、昨年は2.15兆元まで膨らんだ。

 今年の専項債の新規起債額の計画は当初2900億元だったが、数回の予算追加により現時点では3.75兆元まで積み上がった。8月末には起債の実績も2.9兆元と早くも前年の規模を上回った。来年の起債額は3.5兆元前後と、今年の計画に並ぶ水準が見込まれている。「新基建」をはじめインフラ投資が引き続き中国経済のけん引役として期待される。

 それに対し、財政赤字のファイナンスを目的とした一般債の年度予算額は、昨年の9074億元から今年は5580億元に減額される。また、国際決済銀行のデータによると、金融を除く中国民間部門債務の対GDP(国内総生産)比率は210%と高止まりしているが、昨年の政府部門債務(中央・地方政府含む)の対GDP比率は50%前後にとどまる。

 政府部門と民間部門を併せた国全体の債務の対GDP比率では、中国は米国(250%)や日本(240%)と同等で、中国だけが特段過大な債務リスクを負っているわけではないと言える。

(フィリップ証券リサーチ部・李一承)

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