米7-9月期GDP、前期比33.1%増―過去最高の伸びで市場予想上回る
2020/10/30 10:56
<チェックポイント>
●経済活動再開で個人消費と民間投資が急増し全体押し上げ
●パンデミック前19年10-12月期実績値を3.5%下回る
●10-12月期GDPは前期比3-6%増に大幅鈍化―市場予想
米商務省が29日発表した20年7-9月期の実質GDP(国内総生産)・速報値は、新型コロナのパンデミック(感染症の世界的流行)が一服し、5-6月から徐々に始まった経済活動が本格化したことを受け、季節調整済みで前期比年率換算33.1%増と、前4-6月期の同31.4%減から3期ぶりに増加に転じ、過去最高の伸びとなった。市場予想の同30-33%増に対しても上回った。
パンデミックの悪影響を受けた1-3月期は同5%減と、14年第1四半期(1.1%減)以来6年ぶりにマイナス成長となり、前期は第2次世界大戦後では初めてGDPのマイナス幅が10%を超え、1947年以来の最大の落ち込みとなった。
7-9月期GDP成長率はは市場予想を上回ったが、実績値(18兆5840億ドル)はパンデミック前の19年10-12月期実績値(19兆2540億ドル)を3.5%下回っており、新型コロナで失われたGDPの60%超しか回復していない。市場では個人消費は4月中旬以降、経済活動の一部再開により回復し始めたが、7-8月は感染再拡大で経済活動が再び抑制され、個人消費は停滞するため、10-12月期GDPは3-6%増にとどまり、パンデミック前の水準に戻るのは21年暮れごろとみている。
7-9月期GDPの主な内訳は、全体の約7割を占める個人消費が40.7%増と、前期の33.2%減から3期ぶりに増加に転じ、過去最高の伸び率となった。投資部門も住宅以外の民間投資は20.3%増(民間投資全体では83%増)と、前期の27.2%減から4期ぶりに増加した。
外需部門でもGDP押し上げ要因である輸出が59.7%増(前期は64.4%減)と、3期ぶりに増加。一方、GDP押し下げ要因である輸入は91.1%増(前期は54.1%減)と4期ぶりに増加したが、輸出の増加幅を上回ったため、貿易赤字が1兆0108億ドルと、前期より2357億ドル拡大した結果、純輸出(輸出額-輸入額)の成長率寄与度はマイナス3.09ポイント(前期は0.62ポイント)となった。
一方、政府部門(政府消費支出と固定資本形成)は4.5%減と、前期の2.5%増から7期ぶりに減少した。特に、連邦政府は6.2%減(前期は16.4%増)、そのうち国防を除くと18.1%減(同37.6%増)と、前期に急増した企業や家計への資金供給や失業対策など景気支援の財政支出が夏に削減され急減した。
可処分所得の伸びが季節調整前で前期比年率換算13.2%減(季節調整後の実質では16.3%減)と、前期の44.3%増(同46.6%増)から減少に転じた。可処分所得に対する貯蓄の割合である貯蓄率も15.8%と、前期の25.7%を大幅に下回り、今後、個人消費の伸びが鈍化する可能性がある。
インフレ動向を示し、名目GDP伸び率(38%増)から実質GDP伸び率を算出するときに使われる物価指数であるGDPデフレーターは、前期比年率換算で3.6%上昇と、前期の1.8%低下から上昇に転じ、市場予想の3%上昇を上回った。
一方、PCE(個人消費支出)物価指数も前期比年率換算3.7%上昇と、前期の1.6%低下から上昇に転じた。また、FRB(米連邦準備制度理事会)が最も重視しているコアPCE物価指数(値動きが激しいエネルギーと食品を除く)も3.5%上昇(前期は0.8%低下)となり、FRBの物価目標の2%上昇を大幅に上回ったが、1-9月全体ではインフレ率は低水準となっている。
<関連銘柄>
NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、
SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、
NYダウベア<2041.T>
提供:モーニングスター社
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