<新興国eye>IMF世界経済見通し―カンボジアも新型コロナの影響深刻
2020/10/30 14:01
10月13日、IMF(国際通貨基金)は、世界経済見通し(WEO)2020年10月版を発表しました。
世界経済については、「コロナ禍での暮らしは類例のない試練であったが、世界は適応しつつある。ロックダウン(都市封鎖)が緩和され、世界中の中央銀行と政府がかつてない規模の政策支援を迅速に実施した結果、世界経済は今年前半の崩壊の深みから回復しつつある。危機のピークに急激に落ち込んだ雇用も、部分的に回復してきた」としています。このため、世界全体の20年の成長率予測を、マイナス4.4%に引き上げました(前回予測マイナス5.2%)。また、21年の成長率は、5.2%に回復すると見ています(前回5.4%)。
このように世界経済が大きな困難に直面している中で、カンボジア経済も深刻な状況になるものと見られます。
成長率予測は、20年はマイナス2.8%(前回マイナス1.6%)まで低下すると見ています。ただ、21年にはリバウンドするとして、成長率を6.8%(前回6.1%)と見ています。
物価上昇率は、低位安定を予測しており、20年2.5%(前回1.5%)、21年2.9%(前回1.9%)と見込んでいます。
経常収支の赤字(対GDP比)は、19年の15.8%から20年には25.4%に大幅に悪化すると見ています。21年には、16.3%まで戻すと予測しています。これは、主要な輸出先国である欧米の経済悪化で、カンボジアからの輸出が期待できないためと見られます。
なお、IMFでは、「危機の終息は程遠い状況だ。雇用は依然パンデミック以前の水準を大幅に下回り、労働市場は二極化が進み、低所得労働者、若年層、女性がことさら大きな打撃を被っている。貧困層はより貧しくなり、今年は9000万人近くが極度の貧困に陥ると予想される。この悲惨な状況から回復する道のりは、長く、不均等で、きわめて不確実なものになりそうだ。財政および金融政策による支援を、できるかぎり拙速に終了しないことが肝要だ」と指摘しています。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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提供:モーニングスター社
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