女性役員登用はESGの大きな一歩、30%Club機関投資家グループが進める建設的な対話が企業変革促す

投信

2020/11/6 7:50

 上場企業の役員に占める女性割合3割を目指す「30%Club Japan」ワーキンググループの一つであるインベスター・グループが、去る10月28日に初のアニュアルレポートを発行した。同グループは、国内の大手機関投資家で構成され、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や第一生命保険といったアセットオーナーの他、国内の大手運用会社など合計25社が参加している。参加会社の運用資産総額は2500兆円を上回る大きな影響力を持つ組織だ。11月5日にオンラインでアニュアルレポートに関する記者説明会を開催し、活動の概要について説明した。30%Clubが推進する女性活躍拡大の取り組みが、ESG投資の「S(社会)」と「G(ガバナンス)」の視点で大きな一歩になるという。

 30%Club Japanインベスター・グループのメンバーは、野村アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、アセットマネジメントOne、三井住友トラスト・アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメント、フィデリティ投信、ニッセイアセットマネジメント、ブラックロック・ジャパン、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、JPモルガン・アセット・マネジメント、りそなアセットマネジメント、ドイチェ・アセット・マネジメント、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズなど、国内公募投信を提供している運用会社の他、ウエリントン・マネージメント・ジャパン、MU投資顧問など機関投資家向けの投資顧問会社、そして、三菱UFJ信託銀行など信託銀行も含む。

 多くの運用会社が30%Club Japanの活動に賛同し、インベスター・グループとして積極的に女性取締役の拡大に積極的な理由について、同グループのバイスチェアを務める三井住友トラスト・アセットマネジメント代表取締役社長の菱田賀夫氏は、「運用会社は、責任ある機関投資家として投資先企業の価値向上に資するスチュワードシップ活動を通じ、お客さまからお預かりした資産の中長期的なリターンの最大化を目指しているが、ダイバーシティ(多様性)は、ESGの『G』と『S』から企業価値に影響を与える」とした。

 また、「ダイバーシティは、国籍や人種、文化、世代など女性の登用に限るわけではないが、女性が半分を占めることから、女性の登用を進めることは容易で進めやすい。また、女性登用が進むとダイバーシティが進み、企業の持続可能性を高める効果は大きい。この変革には企業トップの意識改革が重要であり、投資先企業との対話を通じて企業の変化を促したい」と語っている。

 そもそも「30%Club」は、企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を通して企業の持続的成長の実現を目的とした世界的なキャンペーン。2010年に英国で始まった。スタート当時に、英国企業の取締役会に占める女性の比率は12%だったが、2018年に30%を超えたという。日本は2019年5月1日に14カ国目として正式に活動を開始。現在、「TOPIX社長会」「インベスター・グループ」「メディア・グループ」「大学グループ」の4つのワーキンググループが稼働している。なお、30%Club活動は、世界16カ国で展開されている。

 現在、TOPIX100ベースで、企業の取締役に占める女性比率は12.9%であり、30%Club Japanでは、2030年までにこの比率を30%以上に高めることを目標に掲げている。30%Club Japanの創設者であるデロイトトーマツコンサルティング ジェンダー・ストラテジー・リーダーの只松美智子氏は、「30%は化学反応が起こる分岐点」とし、取締役会の女性比率が30%を超えると女性の意見が少数意見ではなく意思決定に影響を与えるようになり、変革のスピードが加速すると語る。そして、取締役会や企業の重要な意思決定機関に女性の比率が高まることによって、ガバナンスの向上、リスク管理の向上、より効果的な戦略の構築など、企業価値の向上が進むことが知られていると紹介した。

 10月に発行したアニュアルレポートでは、インベスター・グループに所属する運用会社各社が、それぞれの投資先との建設的な対話の中で、ダイバーシティについて問題提起し、その対話が進んだ結果、企業に変化が表れた代表的な事例5社について紹介している。このような成功事例が広まることが重要であるとし、今後も積極的な情報発信に努める方針だ。

提供:モーニングスター社

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