FOMC、政策金利と量的金融緩和の現状維持を決定―資産買い入れ規模を議論

経済

FOMC

2020/11/6 9:42

<チェックポイント>

●「コロナ危機は中期的に米経済活動の見通しに相当なリスク」との判断維持

●「資産買い入れについて議論」とのパウエルFRB議長発言受け緩和強化観測強まる

●FRB議長、政府の追加財政支援策に期待感示す

 FRB(米連邦準備制度理事会)は5日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を現状のゼロ金利(0.00-0.25%)に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 FRBは、会合後に発表した声明文で、「われわれは長期にわたり、雇用の最大化と2%上昇の物価目標の達成を目指す。このため、インフレ率が物価目標を下回っていることから、当分の間はインフレ率が緩やかに物価目標の2%上昇を超過することを目指す」とし、平均インフレ目標政策(AIT)のフォワードガイダンスの継続を改めて強調した。

 量的金融緩和(QE)政策をめぐっては、前回会合時と同様、「家計や企業への資金フローを支えるため、今後数カ月、国債とMBS(不動産担保証券)の買い入れを少なくとも現在のペースで増やす」との文言を使い、現在の月1200億ドルの買い入れ規模を維持する考えを示した。パウエルFRB議長も会合後の会見で、「われわれは月1200億ドルの買い入れペースを緩めることは考えていない」と述べている。

 FRBは今回の会合でも月1200億ドルの資産買い入れ規模を据え置いたが、「(雇用とインフレの)2つの目標の達成が妨げられるリスクが生じれば、金融政策を調整する用意がある。新型コロナの感染状況や雇用市場の状況、インフレ圧力、金融状況や国際情勢を含めた幅広いデータを考慮する」との前回会合時の文言を残し、インフレ率を引き上げるため、買い入れ規模を拡大し、景気刺激を一段と強める可能性を示している。

 パウエル議長は会合後の会見で、「毎月の資産買い入れについて議論した」と述べ、買い入れ規模の拡大の可能性を示唆した。ただ、市場では米大統領選の最終結果が出るまで時間がかかることから、FRBは当面、大きな政策変更は避ける可能性が高いと見ている。

 また、7月からの新型コロナ感染の再拡大で経済活動の再自粛による米経済のV字型回復が困難になる可能性が高まっていることについて、「経済活動と雇用はここ数カ月で改善したが、依然としてパンデミック(感染症の世界的流行)前の年初めの水準を大幅に下回っている」、「弱い需要と原油価格の急低下により、消費者物価が低く抑えられている」とした上で、「米経済の道筋は新型コロナの行方に大きく左右される。短期的には経済活動や雇用、インフレに悪影響を与え、中期的には経済見通しにとって大きなリスクになる」との前回からの見方を維持した。

 こうした状況下では、FRBができることには限界があり、政府の財政政策が当面、重要となっているとのメッセージを盛り込んでいる。パウエル議長も会見で「米経済の改善ペースはここ数カ月緩やかになっている」と懸念を示している。

 市場では、FRBには新たな金融政策の余地が多く残されていないため、政府の追加財政刺激策の早期実施に期待を寄せると見ている。パウエル議長は会合後の会見で、「追加景気刺激策が得られれば、一段と景気回復が強まると考える」と述べ、経済成長を支えるためには政府の追加財政支出が必要との判断を示した。

 このほか、FRBは今回の会合でも既存のQE政策の継続も確認した。これは償還期日が来た国債の全額をロールオーバー(売り戻さず、持ち越しによる長期保有)するほか、MBS元本の償還金の全額を国債とMBSへの再投資を行うもの。

 FRBは金融市場の安定策として、3月15日の会合で、もう一つの政策金利として設定しているIOER(市中銀行がFRBに預け入れることが義務付けられている準備預金の所要準備を上回る預入額(超過準備預金)に付与される金利)を0.10%に引き下げたが、今回の会合でも据え置いた。

 さらに、3月17日の会合で、コマーシャル・ペーパー(CP)市場に流動性を潤沢供給するため、08年の金融危機時に導入したコマーシャルペーパー・ファンディング・ファシリティー(CPFF:CP買い取り支援制度)を再導入し、直接、CP発行体からCPを買い取ることを明らかにしたが、これも据え置いた。

 次回のFOMC会合は12月15-16日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

(イメージ写真提供:123RF)

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