<新興国eye>カンボジア、21年予算法案政府案決定―歳出を切り込むも赤字拡大

新興国

2020/11/6 15:10

 10月23日、カンボジアの内閣にあたる閣僚評議会は、2021年度予算法案を承認しました。予算法案は今後、国民議会(下院)および上院で討議され、年末までに成立する見込みです。

 21年度(1-12月)予算案では、歳出は前年度比4.0%減の32兆97億リエル(約8400億円)、歳入は14.9%減の27兆7687億リエル(約7300億円)となり、財政赤字は対GDP比8.96%(前年度6.33%)に悪化する見込みです。

 歳出のうち、給与等の経常支出は5.4%減と切り込むものの、インフラ等の資本支出は1.9%減にとどめています。また、セクター別に見ると、社会7兆8249億リエル(対前年度比0.6%減)、経済関係6兆4258億リエル(同12.3%減)、防衛・治安4兆7696億リエル(同0.5%減)、一般管理1兆9722億リエル(同21.5%減)などとなっています。

 政府債務は20年6月末現在で79億200万ドル(約8000億円)となり、中国からの借り入れが全体の46.9%を占めています。21年度予算では、借入上限を15億SDR(約2230億円=国際通貨基金加盟国特別引き出し権換算)と定めています。20年度は14億SDRでしたので7.1%増となります。なお、カンボジアはいわゆる「債務の罠」とはなっておらず、公的債務は健全な範囲にあります。

 政府では、予算は、人々の生命と生活を守り、社会・経済の安定性を維持し、新型コロナ後の経済の再生と成長に焦点を当てたとしています。

 21年度は新型コロナの影響で経済見通しが不透明であり、歳入、特に税収の落ち込みと財政赤字の拡大が懸念されます。コロナ対策で貧困層への支援等を続ける一方で、コロナ後の経済回復に向けて予算を確保したいところであり、海外からの支援の拡大が期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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