<中原圭介の相場観>ワクチンの完成で個人主導の相場は終えんするのか 

 米ファイザー<PFE>が新型コロナウイルスワクチンの第3相の治験で、参加者の9割超に効果があったことを公表した。まさか大統領選の趨勢(すうせい)が決した直後に出てくるとは、タイミング的に全く想定していなかった。

 コロナ後を見据えた株式市場では9日に、NYダウが初の3万ドルに迫る場面があった。しかし、その後は利益確定売りに押されて2万9157ドル(前日比834ドル高)で大引け。また、個人投資家はナスダック指数が1万1713ポイント(同181ポイント安)に下落したことに注目すべきだろう。

 8月13日のコラムでは、新型コロナワクチンが完成すれば米国株はもう一段高するだろうが、ITハイテク企業の収益拡大を抑えるのでナスダック指数が大天井を付けることを意識しておきたいと指摘した。実際に、米国株では「ロビンフッダー」と呼ばれる個人投資家が、コロナ後に強かった個別株群に利益確定の売りで反応した。10日の東京市場でも同様の動きを示している。

 コロナ後の相場は日米ともに個人投資家が主導し、上昇相場を演出する大きな要因となってきた。裏を返せば、彼らはまた下落相場をもたらす大きな要因になる。今後1~2週間のナスダック指数やマザーズ指数の値動きには注意が必要だ。

 ただし、現時点ではワクチンに関する情報は不足している。ワクチンによる抗体がどのくらい長持ちするのか、また、ウイルスの突然変異に対応できるのかなどはっきりしていない部分が多い。

 その上、米国ではワクチンが完成しても接種しないという人の割合が多いといわれている。ワクチンに対するアレルギーが日本と比べ物にならないほど強いのだ。すべての投資家に求められるのは、ワクチンへの過度な期待はついえるかもしれないというリスクを念頭に、臨機応変に対応する投資スタンスだろう。

(アセットベストパートナーズ 中原圭介)

(写真:123RF)

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