<新興国eye>タイ中銀、政策金利を据え置き―4会合連続

新興国

2020/11/19 11:10

 タイ中央銀行は18日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を過去最低の0.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。

 中銀は20年2月会合で政策金利を0.25ポイント引き下げたあと、新型コロナウイルスのパンデミック(世界大流行)の悪影響により、タイ経済のリセッション(景気後退)懸念が強まったとして、3月20日の緊急会合で0.25ポイント引き下げた。その後の3月25日の定例会合では据え置きを決めたが、パンデミックの悪影響が一段と強まった5月会合で今年3回目となる、0.25ポイント再利下げを決めている。この結果、2月以降の利下げ幅が計0.50ポイントに達し、政策金利も過去最低のゼロ金利水準となったことから、6月会合で現状維持に転換した。据え置きは前回9月会合を含め、4会合連続となる。

 中銀は会合後に発表した声明文で、現状維持を決めたことについて、「最近はGDP(国内総生産)が予想以上に回復しているにもかかわらず、タイ経済の回復ペースは遅く、低金利政策の支援を引き続き必要としている。景気回復は依然ぜい弱で、先行きの見通しはかなり不確実となっている」とした上で、「適切、かつ、最も効果的なタイミングで行動するため、政策金利を据え置き、政策金利の余地を残すことを決めた」と必要に応じて再利下げの余地を残したとしている。

 経済の見通しについては、「7-9月期GDPは予想以上に改善したが、セクターによってまだら模様の回復となっている」とした上で、「タイ経済がパンデミック前の水準に戻るには約2年かかる」とした。

 インフレ見通しについては、「21年のインフレ率はエネルギー価格の上昇を反映し、マイナスにはならない」とした。中銀は9月経済予測で、20年のインフレ率の見通しをマイナス0.9%、21年を1.0%上昇と予想している。

 通貨バーツの為替相場については、「バーツは米大統領選挙の結果や新型コロナウイルスワクチンの開発の進展を好感した(国内金融市場での)リスク投資意欲の高まりを受け、ドルに対して急速に上昇している。われわれはバーツの上昇がぜい弱なタイ経済の回復に悪影響を及ぼす恐れがあると懸念している」とした上で、前回会合時と同様、「為替相場の進展を注視し、適切な追加措置が必要かどうか検討していく」としている。

 今後の金融政策については、「景気回復を進展させるためには政府との政策協調が極めて重要になる。金融政策は引き続き金融緩和を維持しなければならない。流動性対策も資金を必要とするセクターにタイミング良く供給されるようにする必要がある」と当面は金融緩和スタンスを維持する考えを示した。

 ただ、中銀は今回の会合で、国内の政治混乱の状況に関し、「金融政策を議論するにあたっては、国内政治の先行き不透明や企業と家計の資金繰り状況などさまざまなリスクを注視する」とし、「必要に応じ、追加の金融政策手段を取る用意がある」としている。

 市場では、政策金利はすでに過去最低のゼロ金利水準に達し、利下げ余地が少ないことを考えると、景気回復ペースが遅くても持続している間は政策金利を据え置く可能性が高いと見ている。

 次回会合は12月23日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、iS新興国<1362.T>、アジア債券<1349.T>、

 上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

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