<新興国eye>インドネシア中銀、0.25ポイント利下げを決定―政策金利過去最低水準の3.75%に

新興国

2020/11/20 11:44

 インドネシア中央銀行(BI)は19日の理事会で、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を0.25ポイント引き下げ、過去最低水準の3.75%とすることを決めた。市場の大方の予想は政策金利の据え置きだったが、一部では0.50ポイントの大幅利下げが予想されていた。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も3.00%、翌日物貸出ファシリティー金利も4.50%と、いずれも0.25ポイント引き下げた。

 中銀はパンデミックを受け、20年2月から利下げを再開。7月まで4会合連続の利下げを決めた。今年に入ってからの利下げ幅は計1.00ポイントに達したことを受け、8月会合では政策金利の据え置きに転換し、前回10会合まで3会合連続で現状維持を決めていた。

 ただ、インドネシア経済は、新型コロナのパンデミック(感染症の世界的流行)による悪影響により、7-9月期GDP(国内総生産)が2期連続のマイナス成長と、事実上のリセッション(景気後退)入りとなっており、10-12月期の成長率を加速させるために金融政策の方針を転換し、7月以来4カ月ぶりの利下げに踏み切った。

 中銀は会合後に発表した声明文で、利下げ再開を決めたことについて、「インフレが低下する中、外部環境(通貨ルピア相場)が安定していることを考慮し、景気回復を加速させるためのさらなる手段として利下げを決めた」と、リセッションからの早期脱却を目指すためとしている。

 前回の会合では、ルピア相場が経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に比べて過小評価(アンダーバリュー)されていると判断して政策金利の据え置きを決めたが、今回の会合ではルピア相場が外国からの国内金融市場への資金流入が続いてルピア高が加速しているため、利下げしやすい環境が整ったとしている。

 ルピア相場については、「金融市場の安定化対策や外国からの国内金融市場への資金流入が継続していることにより、11月18日時点で、10月末時点に比べ3.94%上昇(ルピア高)し、前回会合時点の9月末比1.74%上昇からさらに加速した」と下落懸念後退を認識。その上で、「ルピア相場は19年末時点からは1.33%下落しており、経済のファンダメンタルズに比べ過小評価されているため、今後、インフレ率が低いことや国内資産の利回りが魅力的なこと、さらに経常赤字が低下していることから上昇する可能性がある」、「市場メカニズムと経済のファンダメンタルズに従って、金融市場と外為市場に適切な流動性が供給されるよう公開市場操作(オペ)を最適化することにより、ルピア相場を安定させる政策を強めていく」との姿勢を強めている。

 景気見通しについては、「7-9月期GDPは前期比5.05%増と改善したものの、前年比では3.49%減とマイナス成長のままだ」とした上で、「われわれはポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を通じ、政府とのシナジー(相乗)効果を引き続き強め、景気回復を加速させるためのさまざまな政策が一段と効果的に講じられるようにする」としている。

 ポリシーミックスの一環として、中銀は7月初め、総額903兆4600億ルピアの新型コロナ危機対策費を政府と共同で負担するため、397兆5600億ルピアの新発国債の直接引き受けを含め、全体の6割超にあたる574兆4000億ルピアを負担することで合意したが、今回の会合でも声明文で、前回会合時と同様に、「景気回復を一段と促進するため、政府との政策協調によるシナジー効果を強めていく。SBN(短期国債)の買い入れを通じ、政府の20年度予算の資金調達に協力する責務を引き続き負っている」と政府の財政健全化を支援する考えを改めて強調した。

 インフレの現状認識については、「10月のCPI(消費者物価指数)は前年比1.44%上昇と、9月の1.42%上昇から伸びが加速したものの、(パンデミックによる)内需不振を受け、依然として低い水準にある」とし、今後の見通しについても、前回会合時と同様、「今年は物価目標(3%上昇±1%)のレンジの下限を下回るが、21年は物価目標の水準に戻る」との見方を据え置いた。

 次回の金融政策決定会合は12月16-17日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、iS新興国<1362.T>、上場EM債<1566.T>、

 iSエマジン<1582.T>、アセアン50<2043.T>

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