海外株式見通し=米国、中国
米国:強気になりにくい局面、コモディティー・シフト始まる?
米ファイザー<PFE>と独ビオンテックが共同開発した新型コロナワクチンの接種が英国で開始され、米国でも導入される。ワクチン普及による早期経済正常化に加え、超党派議員で提出する大型追加経済対策法案の早期成立への楽観的見通しが相場を押し上げている。米資産運用会社ブラックロックは11月23日の週次コメンタリーで、来年見込まれる循環的上昇の恩恵を受けやすい投資対象として米国の小型株を挙げた。
一方、11月17日にはバンク・オブ・アメリカのストラテジストがヘッジファンドなどの投資家調査に基づき、株式への資産配分が2018年1月以来の高水準であること、現金保有の割合が15年4月以来の低さとなったことなどから株式に対する投資家のセンチメントが「極端な強気」に近づいていると指摘。「今後数週間から数カ月、ワクチンの材料は売りだ」としてリスク資産を売り始める時期との見解を示した。年末に向けてここから強気になりにくいところだろう。
ストラテジーの観点で特に注目すべきは、株式相場とコモディティー(商品)相場の関係だ。現物商品先物の銘柄で構成するS&P GSCIトータルリターン指数のS&P500指数に対する倍率を1970年以降で見ると、現在は(1)72年の「ニフィティ・フィフティ」バブルや、(2)00年の「ドット・コム」バブル時を下回る0.5倍近辺と過去最低水準まで低下している(グラフ参照)。同倍率は73~74年の石油ショック時、および08年のリーマン・ショック前にいずれも8倍前後まで急騰した。
電気自動車や再生可能エネルギーインフラは貴金属や非鉄金属などの需要増を伴い、異常気象は穀物価格を上昇させる。同倍率が中・長期的に上昇局面となる「コモディティー・シフト」がスタートしている可能性もある。その前提として、米ドル安基調が明確化するかどうかがカギを握るだろう。
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
中国:35年までの所得倍増目指す、「GDP米国超え」20年代後半にも
「5カ年計画」がテーマとなる中国共産党第19期第5回全体会議(5中全会)が10月末に北京で開かれた。採択された文書(コミュニケ)によると、2035年までの長期目標は「中等先進国」に相当する1人当たりGDP(国内総生産)の達成、イノベーション型国家の前列(先頭)入り、中産階級層の拡大、二酸化炭素の排出削減、ソフトパワーの充実、環境保護、都市と農村の格差解消など幅広い項目が盛り込まれた。
その中でも、1人当たりGDPが中等先進国に達することが35年長期目標の最大テーマとして挙げられた。過去には、12年に開かれた第18回共産党大会で20年までのGDP倍増計画(10年比)が掲げられ、国家統計局の「年国民経済社会発展統計(19年)」によると、1人当たりGDPが10年の3万464元(約4550ドル)に対し、19年に7万892元(同約1万ドル)に倍増し1年前倒しで実現した。
なお、中等先進国に達する1人当たりGDPとしては2万ドルが念頭に置かれているもようだ。
国際通貨基金の最新世界経済見通しによると、今年の主要国のGDP成長で中国が唯一プラス成長(1.9%)を達成すると見込まれている。また、中国の来年の成長率予想を8.2%としており、これが実現すれば中国のGDP規模は米国の四分の三の水準まで拡大する見通し。従来は30年代初頭に追い抜くとみられていたが、コロナ禍からの回復速度を映し、両者の逆転が20年代後半に早まるかもしれない。
現時点で中国経済は米国に規模が及ばないものの、GDPの世界に占める割合がリーマン・ショック直後(世界全体の1割未満)から上昇。世界経済回復のけん引役としての力もリーマン・ショック後よりも強さを増している面もあるだろう。
(フィリップ証券リサーチ部・李一承)
(写真:123RF)
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