ECB、政策金利据え置き―緊急債券購入枠の5000億ユーロ増額などを決定

経済

2020/12/11 9:55

<チェックポイント>

●緊急債券買い入れ制度「PEPP」の運用期間を22年3月まで延長

●「PEPP枠は全部使い切らない」―ラガルドECB総裁、バランスシート悪化懸念に配慮

●20年GDP見通しは7.3%減に上方修正

 ECB(欧州中央銀行)は10日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に、また、下限の中銀預金金利もマイナス0.50%に、上限の限界貸出金利も0.25%に、いずれも据え置くことを全員一致で決めた。政策金利の据え置きは、前回10月会合に続いて5会合連続。市場予想通りだった。

 ECBは会合後に発表した声明文で、今後の金融政策について、前回会合時と同様に、「今後は経済予測の期間中、インフレ見通しが2%上昇をやや下回る水準(物価目標)に十分に収束するまで、ECBの政策金利は現在の水準か、または、一段と低い水準となることが予想される」と将来の利下げに含みを残した。ただ、市場では利下げ余地は少ないとみている。

 今回の会合では、量的金融緩和(QE)措置を一段と強化した。3月18日の緊急理事会で、新型コロナ危機対策として導入を決めた緊急債券買い入れプログラム「PEPP」の規模をさらに5000億ユーロ拡大し、1兆8500億ユーロとした。その上で、運用期限も従来の21年6月末から9カ月延長し、22年3月末までとすることを決めた。

 6月会合で、PEPP規模を6000億ユーロ拡大し、1兆3500億ユーロとしたが、9月以降、欧州で新型コロナの感染が再拡大し、スペインやイタリア、フランス、ドイツが相次いでロックダウン(都市封鎖)を再導入し、景気懸念が広がっていること受け、今年2度目の増額を決めた。

 PEPPの期限延長後は新規の買い入れを行わない代わりに、国債の満期償還金を再投資する、いわゆるロールオフ(過剰流動性を吸収するための不胎化政策)を23年12月末まで1年延長することも決めた。ラガルドECB総裁は会合後の会見で、「今回拡大した債券買い入れ枠を全部使い切る必要はない」と述べ、景気回復が強まれば、債券買い入れを減額する可能性を示唆した。この総裁発言はECB内の債券買い入れ急増によるバランスシートの悪化懸念に配慮した形となっている。このため、ECBは声明文でも、PEPPの運用について、「いずれの場合でも、新型コロナ危機が終わるまで買い越し超を続ける」とした。

 また、19年3月に景気を刺激するため、既存の資産買い入れプログラム「APP」による金融緩和を満期償還金の再投資だけで継続する方針を決めたが、今回の会合でも据え置いた。

 このほか、ECBは銀行による中小企業や家計向け融資の拡大を目指すTLTRO3(貸出条件付き長期資金供給オペ)の貸出条件をさらに緩和する方針も決めた。運用期間も従来の21年6月末までから12カ月延長し、22年6月末までとした。TLTRO3は19年9月19日から導入され、銀行による企業や家計への貸し出し拡大を目指している。

 ラガルド総裁は会見で、ECBが四半期ごとに公表しているユーロ圏の経済見通しを明らかにした。それによると、インフレについては、20年の見通しを従来予想の0.3%上昇から0.2%上昇に引き下げた。21年は従来予想の1.0%上昇に据え置いた。22年は1.1%上昇(従来予想は1.3%上昇)、23年は1.4%上昇となっている。

 景気見通しについては、20年のGDP(国内総生産)見通しを7.3%減と、従来予想の8.0%減から上方修正したが、21年は3.9%増と、従来予想の5.0%増から下方修正した。22年は4.2%増(従来予想は3.2%増)、23年は2.1%増としている。

 次回会合は21年1月21日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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