海外株式見通し=米国、香港
米国株:「水先物」上場で考える危機、浮上する銘柄は?

CME(米シカゴ・マーカンタイル取引所)が12月7日に、「ナスダック・ヴェレス・カリフォルニア水指数」の先物を新規に上昇した。同指数は農家や企業などがカリフォルニア州で売買している水の使用権に関する価格を加重平均して算出したもので、干ばつで水が不足すると価格が上昇し、雨が十分に降れば価格下落しやすい。
CMEは「地球温暖化や人口増により世界人口の三分の二が2025年までに水不足に陥る」と予想し、水不足の深刻化が水資源市場の成長を後押しするとみている。現在、株式市場の関心はパワー半導体など電力を制御する技術に向きやすくなっているが、水不足とそれに伴う食糧不足問題の方が先に深刻化する可能性が高いのかもしれない。
海水淡水化プラントに係る水処理膜は東レ(3402)や東洋紡(3101)のような日本企業が強みを有する分野だが、米国にも水資源に関連した技術を提供するザイレム<XYL>のような企業がある。また、食糧危機への懸念が広がればアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド<ADM>などの穀物メジャー商社が注目されやすくなるだろう。
次に、米大統領選挙後のドル安や商品市況の回復に伴い新興国への資金流入が増加している。2000年のITバブル崩壊後から08年のリーマン・ショック直前までの「コモディティー(商品)・シフト」と同時に起こったのが「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)」に代表される新興国市場ブームだったことが思い起こされる。人口約13.5億人のインド、2.7億人のインドネシアなどを含め、新興国市場は所得水準向上により消費支出の伸びや食生活習慣などの変化に伴う生活習慣病の増加も予想されよう。
人工膵臓(すいぞう)を独占的に取り扱うメドトロニック<MDT>やインスリン依存型の糖尿病患者向け製品の新技術を提供するタンデム・ダイアベティス・ケア<TNDM>などが新興国市場で業績を伸ばす余地があろう。
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
香港株:京東健康と中国オンライン診療市場
香港株式市場の各種株価指数を算出するハンセン指数公司(HSI)が12月9日、中国EC(=Eコマース、電子商取引)サイト大手のJDドットコム<JD>傘下でオンライン医療サービス最大手の京東健康(6618)を主要指数へ組み入れると発表した。JDドットコムのヘルスケア部門として14年に設立された同社は、17年にオンライン診療サービスに進出。19年に本体からスピンオフされて異例の速さで香港市場でのIPO(新規上場)を果たした。
京東健康の事業は、医薬品・健康食品販売とネット医療サービスの2本柱である。オンライン医療サービス部門の「京東互聯網医院」では今年8月、家庭向けにホームドクターサービスの「京東ファミリー・ドクター」を開始。1家族8人まで24時間対応のオンライン医療相談や診察が受けられる。
中国国務院は18年4月、大病院と中小病院との医療格差、およびへき地医療の不足を背景として「インターネット+医療健康」の発展を促進する意見書を公布。医療分野におけるオンライン促進の方針が盛り込まれた。ネット診療には民間のITプラットフォームが欠かせないことから、アリババ<BABA>の「アリババ・ヘルス/阿里健康信息(241)」、テンセントグループの「好大夫在線」と「微医」、中国平安保険の「平安ヘルスケア/平安好医生(1833)」に加えて京東互聯網医院がネット病院を整備し、オンライン分野における医療資源の連携に取り組んできた。
今年初からのコロナ禍とともに、アリババとテンセントが開発したアプリで感染リスクを証明する「健康碼(健康コード)」は今や外出時に欠かせない「通行手形」の機能を果たしている。
足元ではネット診療の対象が軽症の患者や高血圧、糖尿病などの慢性病に限られているが、5Gの普及に伴い、今後はネット医療の高度化が期待される。ネット診療市場において、京東健康と同様に医薬品販売で強みを持つアリババ・ヘルス、逆にネット診療の売上構成比が相対的に高い平安ヘルスケアも注目される。
(フィリップ証券リサーチ部・李一承)
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(写真:123RF)
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