<新興国eye>ブラジル中銀、政策金利据え置き―景気刺激の金融政策指針を終了

新興国

2021/1/21 11:00

 ブラジル中央銀行は20日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を過去最低水準の2.00%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 中銀は19年6月まで10会合連続で現状維持を決めたが、翌7月に景気回復ペースが鈍化する見通しが強まったため、18年3月以来1年4カ月ぶりに利下げに踏み切った。20年は新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)による景気悪化懸念が強まったため、8月まで9会合連続の利下げを決め、利下げ幅は計4.50ポイントに達した。このため、9月会合で現状維持に転換し、今回で4会合連続の現状維持となる。

 中銀は政策決定後に発表した声明文で、(物価目標など)所定の条件が満たされない限り、景気刺激スタンスを緩めないとする、フォワードガイダンス(金融政策の指針)を終了することを明らかにした。

 フォワードガイダンスについて中銀は、「(低下傾向を示していた)期待インフレ率が上向きに転じ、インフレ見通しも十分に金融政策が波及する一定の期間内の物価目標にほぼ収束したことから、これまでのフォワードガイダンスを維持する状況にならなくなった」としている。ただ、「今の脆弱な経済状況は金融緩和による強い景気刺激を必要としているため、機械的に政策金利を引き上げることにはならない」と当面は過去最低水準にある金融緩和を継続する考えを示した。

 20年12月の前回会合時、「今後数カ月先、すなわち、21年は22年に期待インフレ率が物価目標(中心値3.75%、レンジは2.25-5.25%)にほぼ収束するという予測との関連性がやや薄まる可能性がある」とし、最近の急速なインフレ加速を受け、21年の期待インフレ率が高まるとの見方を示した。その上で、「期待インフレ率が物価目標に収束すれば、これまでのフォワードガイダンスを維持する状況にならなくなる」としていた。

 中銀は今回の会合で、「今後の金融政策の決定はフォワードガイダンスからもともとのインフレ見通しの上ブレ・下ブレの両リスクを示す標準シナリオを反映する形で行われる」とした。

 最近のインフレ率は12月のIPCA(拡大消費者物価指数)が前年比4.52%上昇と、11月の4.31%上昇を超え、7カ月連続で伸びが加速している。中銀が18日発表した経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けて民間アナリストが予想した、中銀のIPCAで見た21年のインフレ見通しは前週予想の3.34%上昇から3.43%上昇に引き上げられた。1カ月前の予想は3.37%上昇だった。22年の見通しは前週予想の3.5%上昇に据え置かれた。期待インフレ率が高まっている。

 経済の現状認識については、「20年12月末時点の経済指標は予想以上に改善した」としたが、「最近の新型コロナ感染拡大の影響を捉えきれておらず、政府による緊急的な低所得者向け現金給付プログラムが終了する見通しのため、経済成長の先行き見通し、特に21年1-3月期の不確実性は依然として、従来よりも大きい」と懸念を示した。

 次回の金融政策決定会合は3月16-17日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ボベスパ<1325.T>、iSエマジン<1582.T>、上場MSエマ<1681.T>、

 iS新興国<1362.T>、上場EM債<1566.T>

提供:モーニングスター社

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