海外株式見通し=米国、香港

米国株:存在感強めるブラックロック

 世界最大の資産運用会社ブラックロック<BLK>の2020年10~12月期決算は、調整後純利益が前年同期比20%増と好調だった。昨年末の運用資産は同9月末比11%増の8兆6800億ドル(約900兆円)と過去最高を記録。さらにバイデン米新大統領は、米国家経済会議(NEC)委員長や財務副長官の人事にブラックロック出身者を登用する方針を示しており、金融業界を代表する銘柄として存在感を増しつつある。

 また、15日発表のJPモルガン・チェース、シティグループ<JPM>、ウエルズ・ファーゴ<WFC>など米大手銀の10~12月決算は、貸倒引当金や貸倒損失などの不良債権処理費用が利益を圧迫していた前四半期から一転。貸倒引当金を算出する前提となる経済の先行き見通しが改善したことから、3行とも戻し入れとなる追い風が吹いた。

 金融業界では、フィンテック(金融のIT化)銘柄の動向が重要だろう。20年は、決済情報処理のシフト・フォー・ペイメンツ<FOUR>、デジタル融資や住宅所有者向け保険のレモネード<LMND>、銀行向けクラウドソフトウエアのエヌシーノ<NCNO>、ネット経由で住宅ローンを提供するロケットカンパニーズ<RKT>、アプリ型自動車保険を販売するルート・インシュランス<ROOT>、フードデリバリーの決済アプリを取り扱うドアダッシュ<DASH>が新規上場した。

 さらに、今月13日にはネット通販向けに消費者ローンを提供するアファーム・ホールディングス<AFRM>も株式が公開された。ロケットカンパニーズ、ドアダッシュ、アファームHDの3社の時価総額は15日時点で計100億ドルを超えた。

 長期金利上昇の局面では、将来キャッシュフローの現在価値への割引率が高まることからグロース株であるフィンテック企業への株価下落圧力が強まるとみられる一方、大手商業銀行株は預貸利ザヤ拡大の恩恵を受けて上昇しやすい面がある。長期金利の動向に注意が必要だ。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

香港株:資金流入見込まれる「科創板」

 「中国版ナスダック」と称される「科創板」(スターマーケット)は19年7月に25社でスタートし、20年末には上場社数が215社まで成長した。時価総額も20年末時点で3.3兆元(約53兆円)と当初の6倍近くまで拡大した。

 データ会社win.dによると、科創板上場191社の20年7~9月期決算の純利益の増加率(前年同期比)は63.0%と、同1~3月期の19.3%、同4~6月期の28.3%から加速。中国A株上場4000社における7~9月期のマイナス6.5%とは好対照を成した。また、20年1~9月期決算では、バイオセクターが同32.3%増収、同470%の最終増益となり、ITセクターが同24.0%増収、同68.6%最終増益となるなど、両セクターがけん引している。

 20年2月に上場した東方生物(688298)の20年末までの上昇率は855%に達した。なお、科創板創設から20年末までの全銘柄の平均上昇率は131%に上り、同期間の上昇率は上海総合指数(20%)や深セン総合指数(52%)を上回った。

 香港取引所によると、中国本土市場を通じて香港市場の上場株を売買する制度である「サウスバウンド」(港股通〈こうこつう〉)は、20年の買い越し額が6751億香港ドル(約5600億元)に上った一方、香港から上海や深センの中国本土株に投資する「ノースバウンド」(滬股通〈ここつう〉および深股通〈しんこつう〉)の買い越し額が2089億元にとどまった。

 そうした中、上海取引所が20年11月、科創板上場の6銘柄を中国A株のうち規模や流動性の高い上位180銘柄で構成するSSE180指数に組み入れたほか、香港市場と上海市場の株式相互取引である「ストックコネクト」(滬港通〈ここうつう〉)による科創板への投資解禁方針を明らかにした。同時に、香港市場で上場しているバイオテクノロジー企業も中国本土からのサウスバウンドの対象に組み込まれる方針が示された。

 科創板は新たな買い主体の登場による投資資金の流入が見込まれ、本土市場活性化の主役として内外から大きく注目されよう。

(フィリップ証券リサーチ部・李一承)

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(写真:123RF)

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