ECB、政策金利を据え置き―新型コロナ危機対応の資産購入特別枠の完全消化を否定

経済

2021/1/22 11:03

<チェック・ポイント>

●新型コロナ危機対応資産購入制度「PEPP」枠1兆8500億ユーロを据え置き

●PEPPの運用期間を22年3月まで継続―満期償還金再投資は23年12月末まで

●20年10-12月期GDPはマイナス成長の見通し―ラガルドECB総裁

 ECB(欧州中央銀行)は21日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に、下限の中銀預金金利をマイナス0.50%に、上限の限界貸出金利を0.25%に、いずれも据え置くことを全員一致で決めた。政策金利の据え置きは20年12月の前回会合に続いて6会合連続となる。

 ECBは今後の金融政策について、前回会合時と同様、「インフレ見通しが2%上昇をやや下回る水準(物価目標)に十分に収束するまで、われわれの政策金利は現在の水準か、または、一段と低い水準となることが予想される」とし、将来の利下げに含みを残した。ただ、市場では利下げ余地は少ないとみている。

 また、新型コロナ危機対策として導入を決めた緊急債券買い入れプログラム「PEPP」の規模を1兆8500億ユーロ、運用期限を22年3月末までとする措置も据え置いた。ECBは20年3月18日の緊急理事会で、新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)対策として20年12月までとする7500億ユーロの緊急債券買い入れプログラム「PEPP」を導入し、6月の会合で期間を21年3月、規模を6000億ユーロ増額。前回12月会合でも5000億ユーロ増額し、運用期間を9カ月延長していた。

 PEPPは既存の資産買い入れプログラム「APP」とは別に導入されたもので、債券買い入れを増額することにより、ユーロ圏域内の長期金利の低下を促し、企業や家計の借り入れコストを引き下げ、景気を支援するほか、ディスインフレ(物価上昇率の鈍化)を防ぐことを狙いとしている。ECBはインフレ率を物価目標の2%弱に短期間で戻す必要性を指摘している。

 また、ECBは今回の会合でもPEPPの期限が到来する22年4月以降は新規の買い入れを行わない代わりに、国債の満期償還金を再投資する、いわゆるロールオフ(過剰流動性を吸収するための不胎化政策)を行う方針も据え置いた。ロールオフの期限についても前回会合で1年延長が決まった23年12月末までとする方針も据え置いた。

 PEPPについて、ECBは声明文で、「債券買い入れ枠を全部使い切る必要なない」と明記した。さらに、ラガルドECB総裁は、「新型コロナのパンデミックショックに立ち向かうため、(国や企業、家計にとって)好ましい金融状況(低金利での資金調達)を維持する必要があれば、買い入れ枠を調整(減額)することができる。逆に必要であれば、枠の増額も可能」と増額の可能性に含みをもたせたものの、現行枠の完全消化にこだわらない姿勢を示した。

 また、ラガルド総裁は、「20年10-12月のユーロ圏の成長率は感染再拡大による経済活動の規制により、マイナス成長となり、21年1-3月期も成長が下押しされる可能性が高い」とし、景気の2番底を打つ見通しを示したが、「こうした予想は20年12月に発表した標準経済予測とほぼ一致している」と冷静に受け止めている。

 また、ECBは20年3月に景気を刺激するため、APPによる金融緩和を満期償還金の再投資だけで継続する方針を決めたが、今回の会合でもこの方針を据え置いた。

 このほか、ECBは銀行による中小企業や家計向け融資の拡大を目指すTLTRO3(貸出条件付き長期資金供給オペ)の貸出条件の緩和措置も据え置いた。TLTRO3は19年9月19日から導入され、銀行による企業や家計への貸し出し拡大を目指している。運用期間は前回会合で、12カ月延長し、22年6月末までとしている。

 次回の会合は3月11日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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