日電産、新たな需要の波に手応え――もはやHDD用モーターメーカーにあらず

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2021/1/25 18:45

 もう「HDD(ハードディスク駆動装置)用モーターの会社ではない」――。市場予想を上回る今3月期第3四半期(昨年10~12月)の収益を25日に発表した日本電産(6594)の永守重信会長は、この日オンラインで開催した決算説明会で新たな需要の波への手応えを改めて強調した。かつてHDD分野で体験した飛躍的な市場成長が、自動車や省エネ家電で再現され始めたようだ。

10~12月は「満額回答」好決算、EV向け引き合い拡大

 日電産の連結営業利益は10~12月が464億円(前年同期比47.5%)となり、市場予想の平均(400億円前後)を上回った。通期計画も1400億円から1550億円(前期比42.8%増)に上方修正。新たな自社株買い枠(上限400万株・500億円)のおまけも付き、高い市場の期待に対して「満額回答」の好決算を打ち出した。

 しかし、同社のすごみは既に通過した四半期決算にはない。今後の10年をけん引していく新たな領域が、着実にその存在感を強めている点にこそマーケットからの絶対的な信頼を獲得している理由がある。

 市場が注目するEV用モーターシステムの引き合いは、従来の22社からこの3カ月で新たに15社増えたという。年間200億円超の研究開発費が先行しているため収益化はまだ先だが、既存製品も伸びていることで、車載モーター部門全体の営業利益率は10~12月で7.2%(前四半期は5.0%)を確保した。

 昨年は欧州や中国でガソリン車撤廃の長期目標が打ち出され、英国や日本もこれに追随している。世界的な電動車シフトが進む中で、いち早くモーターの量産化に取り組んだ同社の戦略が奏功した。EVの浸透により、自動車業界特有の完成車メーカーを頂点とする垂直統合型の生産方式は、家電のような水平分業型に変わっていくというのが永守氏のかねてからの読み。そこでは、安くて良い部品を圧倒的な規模で生産できるプレーヤーが勝利する。

家電の省エネ化取り込む

 同社を世界企業に押し上げたHDD用モーターは、既に市場がピークアウトした。しかし、永守会長にとっては想定通りの展開だ。EV向けに加え、HDD用を含む精密小型モーター事業において従来「その他」という名称で開示していた製品群が、省エネ型家電をはじめとする幅広い用途の需要を取り込んでいる。精密小型モーター事業の10~12月の営業利益は前年同期比16.5%増。「極端に言えば、HDD向けがなくなっても影響を受けない」(永守氏)。

 一時は原動力だった主力事業の衰退もいとわない経営戦略。それには、代名詞のM&A(企業の合併・買収)も大きく貢献している。2019年に買収したエンブラコの手掛けるコンプレッサーは、中国などで売上が急速に伸びる大型冷蔵庫向けに繁忙状態だ。利益率の改善も進み、10~12月の家電・商業・産業用モーター事業の営業利益率は9.1%(前四半期は8.8%)に上昇した。

 日電産の株価は昨年の米大統領選を起点にブームになった環境関連テーマの中で、今年1月14日に1万4595円の上場来高値(調整後)を記録した。しかし、同社に関しては一過性の循環物色にとどまらないだろう。マーケットの評価は、先見性が明らかになるにつれてまだまだ高まる余地がある。

(写真:123RF)

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