海外株式見通し=米国、香港

新興国

米国株式

2021/2/18 17:30

米国株:ドル安でGM、フォード注目

 米金融市場は2月12日に、30年国債利回りが2.0%を、10年国債利回りが1.2%を超えるなど、市場参加者がフシ目として強く意識する利回り水準を突破した。また、VIX指数(恐怖指数)が昨年2月以来の20%割れとなるなど、株式相場が不安心理から脱し、経済正常化の先行きに自信を深めつつあるようにみえる。

 ドルインデックスの長期推移では、貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」が問題視された1985~95年ごろ、およびBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興国市場や原油をはじめとする資源価格が高騰した2003~07年ごろはおおむねドル安で推移した。逆に、インターネット興隆期の95~00年ごろ、EC(=Eコマース、電子商取引)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のようなITプラットフォームによる「データ経済」が力を増した12~19年ごろはドル高だった。

 FRB(米連邦準備制度理事会)の債券買い入れ強化によって低い名目金利と高い期待インフレ率のカイ離が見込まれると同時に、財政赤字拡大が想定される相場環境では、ドル安基調下での03~07年型の新興国やコモディティー(商品)主導型の株価上昇が想定される。

 そのようなマクロ環境の下、ドル安メリットを受けやすい多国籍製造業の中でも、自動車業界のかつての2強であるゼネラル・モーターズ<GM>とフォード・モーター<F>が注目される。時価総額はそれぞれ700億ドル台、400億ドル台にとどまる。これに対し、EV(電気自動車)で先行するテスラ<TSLA>は約7800億ドルと圧倒している。

 25年までにGMはEVと自動運転に270億ドルを投じ、フォードもEVに220億ドルを投資すると発表。挑戦者の立場でテスラを追撃する両社への投資をめぐっては低PBR(株価純資産倍率)の観点からも関心が高まる。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

香港株:IPOが活況

 中国の調査会社CVリサーチによると、20年中に世界主要市場でIPO(新規上場)を実施した中国企業(565社)の調達額は8607億元と、全体の約5割を占めた。

 中国で成長したIT関連企業が米国上場を目指す動きが年々強まる中、中国当局は18年後半から中国本土市場の改革を進め、上場ルールをはじめとした規制緩和に取り組んできた。19年7月、中国版ナスダックと称される「科創板」(スターマーケット)が上海取引所で創設された。これに先立ち、深セン取引所のスタートアップ向け市場「創業板」も同年6月から「IPO登録制」を導入して上場ルールを緩和した。

 また、香港市場も他市場との重複上場となる「セカンダリー上場」を呼び込んでいる。20年は、中国のEVメーカーが米国上場を優先したことから米国における中国企業のIPO調達額が14年に次ぐ高水準となった。一方、米中対立が激化する中、中国企業が香港市場へ回帰する動きも顕著となった。

 19年11月のアリババ<BABA>を皮切りに、20年にはJDドットコム<JD>、ネットイース<NTES>など9社が後に続いた。20年末に米国で成立した「外国企業説明責任法」で米国上場の中国企業への圧力が強まるとみられることから、現時点でセカンダリー上場の優先審査指定の要件を満たした米国上場の中国企業(22社)のほぼ全社が香港市場へのセカンダリー上場を目指すとみられる。

 また、ソフトバンクグループ(9984)の出資先である「ティックトック」のバイトダンス、ライドシェアの滴滴出行などの大型ユニコーン中国企業の今後のIPOが見込まれるほか、半導体製造関連のフェローテック・ホールディングス(6890・JQ)が中国子会社の「科創板」上場を目指すなど、中国本土・香港市場のIPOは日本株投資家にとっても身近になってきたようだ。

(フィリップ証券リサーチ部・李一承)

(写真:123RF)

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