海外株式見通し=米国、香港

新興国

米国株式

2021/3/18 17:30

米国株:大型バリューや景気循環株に注目

 米バイデン政権の1兆9000億ドル規模の新型コロナウイルス追加経済対策法は、大半の国民に1人当たり1400ドルが直接給付されるほか、失業保険の上乗せ額を週300ドルとして給付期間を9月6日まで延長するなど、米国史上最大級の大盤振る舞いと言える内容になった。ハーバード大学教授で元財務長官のサマーズ氏は「この30年で目にしなかったようなインフレ圧力を形成しかねない、未知の領域へのステップ」と警鐘を鳴らす。

 米10年国債利回りが1.6%台とS&P500指数の予想配当利回り(約1.5%)を上回る水準まで上昇し、高PERのグロース(成長)株から景気循環のバリュー(割安)株へのシフトが進んでいる。S&P500のグロース指数をバリュー指数で割った倍率(グロース/バリュー比率)は、昨年11月上旬に2.14倍の過去最高を付けた後に低下基調となり、3月12日に約1.85倍に低下。新型コロナの感染拡大前の昨年2月上旬のグロース/バリュー比率が1.5~1.6倍だったことから、グロース株のバリュー株に対する割高感はまだ残っていると言えよう。バリュー株投資では、バンガード・バリューETF<VTV>のような米国大型バリュー株指数に連動するパッシブ型のETF(上場投資信託)が注目される。

 景気循環の波における底離れの動きが株価に反映しやすい景気循環株の中では、ディア<DE>などの農機メーカーに注目したい。中国の大量買いに伴う穀物価格高騰を受けて、米国農業経済バロメーター指数が示すように米国農家の経営状況が改善している。こうした状況では値上げが通りやすいことに加え、収穫などの人手を外国人労働者に多く依存する農業が移動制限により構造的に人手不足となっており、無人・自動運転による省人化需要が高まっている。

 FAO(国連食糧農業機関)の食品価格指数も2014年7月以来の高水準まで上昇しており、食料品価格の安定のためにも「スマート農業」への変革による生産性向上が世界的に強く求めれる。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

香港株:ハンセン指数、規定変更の影響は?

 香港株式市場の各指数を算出するハンセン指数公司(HSI)がこのほど、ハンセン指数、H株指数、ハンセンテック指数など主要指数の構成銘柄の見直し結果を公表した。ハンセン指数では、オンライン診療大手のアリババ・ヘルス、不動産開発準大手の龍湖集団ホールディングス、火鍋チェーン最大手の海底撈国際を新規に採用。3月15日から構成銘柄が55銘柄となった。

 香港市場主要指数の入れ替えと併せて、HSIは過去50年で最大規模となるハンセン指数の規定変更や構成銘柄の大幅拡充方針を発表した。

 主要な規定変更は(1)ハンセン指数の組み入れ銘柄数を2022年までに52銘柄から80銘柄まで増やす(2)従来の12業種を併合した主要7業種から構成銘柄を選出し、業種の構成も少なくとも2年ごとに見直す(3)構成銘柄への組み入れに要する上場期間を最低3カ月とする(4)香港在来銘柄の組み入れ数を20~25銘柄で維持し、構成銘柄数を少なくとも2年ごとに見直す(5)議決権が異なる種類株を含むあらゆる株式の指数全体に占める1銘柄当たり時価総額ウエート上限を8%とする。H株指数にも同様に適用する。

 特に注目されるのは種類株、および他市場との重複上場となるセカンダリー上場株への扱い方の変更だ。HSIが昨年5月に種類株やセカンダリー上場株の指数ウエートの上限を5%としたことを受けて、アリババ<BABA>や美団のような時価総額が大きい銘柄でもウエート上限5%までに指数への寄与度がとどまってきたが、新規定では一律8%となる。

 米国のS&P500指数やナスダック総合指数のような時価総額加重平均型指数における巨大テック銘柄の寄与度の高さを見れば、アリババをはじめ、時価総額が大きい種類株やセカンダリー上場株の指数に与える影響が一層大きくなろう。

(フィリップ証券リサーチ部・李一承)

(写真:123RF)

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