英中銀、政策金利と量的金融緩和規模の現状維持を決定

経済

2021/3/19 10:25

<チェックポイント>

●経済不活発による看過できないたるみ(生産・労働力余剰)がある

●経済のたるみの解消と2%の物価目標が持続的達成まで金融引き締めせず

●新年度予算案やワクチン接種の急速な普及で、経済活動再開は想定より早まる

 イングランド銀行(BOE、英中銀)は18日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を過去最低水準の0.10%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 非伝統的な金融緩和措置である量的金融緩和(QE)規模も総額8950億ポンド(8750億ポンドの国債買い取り枠と200億ポンドの投資適格級の社債買い取り枠)に据え置いた。これも市場予想通りだった。コロナ前から総額4450ポンドの規模で導入されていたQEは、20年3月会合で2000億ポンド、同6月会合で1000億ポンド、同11月会合で1500億ポンドと、それぞれ増額されている。

 市場では会合前、最近の急速な長期金利の上昇に対するBOEの反応に注目していた。ここ数週間、欧米で長期金利が上昇し、金融市場がタイトになったため、ECB(欧州中央銀行)は今後3カ月間、緊急債券買い入れプログラム「PEPP」による資産買い入れペースを加速させる考えを示したからだ。

 英国でも10年ギルト債(国債)の利回りは年初の0.2%から0.9%へと急上昇し、1年ぶりの高水準となっている。しかし、BOEは今回の会合で、現在の買い取りペースを維持する考えを示し、ECBとは一線を画した。BOEは声明文で、「先進国では長期国債の利回りがパンデミック前の水準にまで急伸したが、ポンド相場はやや上昇し、株式市場も依然強靭さを示している。住宅ローン市場もやや緩和しており、英国の金融市場は前回2月会合で最新の経済予測を公表して以降、ほとんど変わっていない」としている。

 今後の金融政策については、前回会合時と同様、「英国経済の見通しは新型コロナの感染拡大や感染拡大を阻止するための規制措置、さらには金融市場や家計、企業がこれらにどう対応するかによって左右され、依然、先行きは極めて不透明となっている」とした上で、「2%上昇の物価目標が持続的に達成されるか、または、経済全体の余剰生産能力(spare capacity)が解消されない限り、金融引き締めは行わない」と金融引き締めを否定。また、「引き続き経済状況を注視し、もしインフレ見通しが一段と弱くなった場合には、われわれの使命(2%上昇の物価目標)を達成するために必要な追加措置を講じる用意がある」と金融緩和を強める考えがあることを示した。

 今回の会合で特徴的だったのは、英国の景気見通しについて、「経済の不活発による看過できないたるみ(生産設備や労働力などの余剰)がある」と指摘したことだ。これは今後、経済活動の規制が緩和された場合、どれだけ早く英国経済が回復するかを決定する重要な要因となる。しかし、BOEは会合後に発表した議事抄録で、「MPC委員の間で、このたるみがどの程度なのかをめぐって、さまざまな意見がある」と指摘。そのため、「今後、5月発表の次回の経済予測の策定に向けた議論の重要部分(核心)になる」としている。

 景気見通しについては、「4-6月期の個人消費の伸びが前回会合で発表した「金融政策リポート」の最新の経済予測よりも強まる可能性がある」と楽観的な見方を示している。これは3月3日に発表された新年度予算案やワクチン接種の急速な普及により、経済活動の規制解除が予測よりもやや早まるためとしている。

 失業率の見通しについては、「20年10-12月期は5.1%に上昇したが、経済の不活発による高水準のたるみ(労働力などの余剰)により、数値以上に高い可能性がある。しかし、2月経済予測の前提に入っていなかった一時帰休者の給与支援制度の4月末打ち切りが新年度予算で9月末まで5カ月間延長されることになり、短期的な失業率の上昇は抑えられる」とした。

 インフレ率の見通しについては、1月は前年比0.7%上昇と、20年12月の同0.6%上昇や11月の同0.3%上昇から加速したが、依然、物価目標(2%上昇)とのカイ離は広がっている。市場では今後、インフレ見通しが弱まれば、一段の金融緩和政策が正当化され、BOEはQE政策への依存からマイナス金利の導入に移るとの見方が出ているが、今回の会合ではマイナス金利について言及はなかった。

 BOEの次回会合は5月6日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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