<新興国eye>トルコ政府、中銀新総裁にカヴジュオール氏を任命

新興国

2021/3/23 13:33

 トルコ政府は20日、中央銀行のナジ・アーバル総裁を解任し、後任の新総裁に元国会議員で経済学者のシャハブ・カヴジュオール氏を任命した。アーバル氏は20年11月に総裁に就任して以降、4カ月での退任となった。地元紙ヒュリエトなどが伝えた。

 アーバル氏の前任者のムラート・ウイサル氏は19年7月の総裁就任から1年4カ月で解任されており、約2年間で2人の総裁が更迭されたことになる。アーバル氏は元財務相(15-18年)で、総裁就任直前まで大統領府戦略予算局長だった。

 カヴジュオール新総裁は15-18年、エルドアン大統領が率いる与党・公正発展党(AKP)の国会議員だった。それ以前はトルコ国営ハルク銀行や金融大手バキフ銀行で要職を歴任している。

 中銀は18日の会合で政策金利を2.00ポイント引き上げ、19.00%とタカ派(インフレ重視の強硬派)スタンスを強めていたが、カヴジュオール氏は2月、地元紙イェニシャファクのコラムで、「世界各国はゼロ金利を維持している中で、トルコが金融引き締めを強めても利上げは間接的にインフレを加速させ、経済問題の解決にならない」とし、アーバル総裁(当時)のタカ派スタンスを批判。エルドアン大統領寄りの見方を示していた。

 新総裁は21日、声明文を発表し、「インフレの低下がトルコのリスクプレミアム(長期金利の指標となる国債金利に対する上乗せ金利)の低下や金融コストの恒久的な改善を促し、マクロ経済の安定に寄与する。また、投資や生産、輸出、雇用を高め、持続的な経済成長にも寄与する」と述べ、「恒久的なインフレ抑制」を中銀の最優先課題とする考えを示した。

 しかし、トルコリラは22日、1ドル=8.39リラと、ドルに対し一時15%も急落した。これは18年のトルコ通貨危機以来、3年ぶりの大幅急落。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーは22日、市場ではアーバル前総裁の更迭により、トルコリラが新たな通貨危機を引き起こす可能性があると伝えた。これはトルコ経済に対する投資家の信頼感が失われ、インフレが加速し、トルコ政府は中銀に圧力をかけ緊急利上げや資本規制に乗り出す可能性が高まるためとしている。

 トルコ統計局が3日発表した2月CPI(消費者物価指数、03年=100)で見たインフレ率は、新型コロナのパンデミック(世界大流行)がピークを過ぎ、経済活動が再開され、景気回復が進む中、前年比15.61%上昇と、前月(1月)の14.97%上を上回り、4カ月連続で伸びが加速した。CPIが15%台となったのは19年8月以来1年6カ月ぶり。

 政府が昨年9月29日に発表した21-23年の新中期3カ年経済計画では、インフレ率の見通しは21年末時点が8%上昇、22年末時点は6%上昇、23年末時点は4.9%上昇と予想している。

 他方、トルコ中銀が21年1月28日に発表した最新の四半期インフレ報告書では、21年末時点のインフレ率は9.4%上昇(予想レンジは7.3-11.5%上昇)と、20年12月の14.6%上昇よりも伸びが大きく減速し、23年末時点で物価目標の5.00%上昇に収束すると予想している。

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 iS新興国<1362.T>、上場MSエマ<1681.T>

提供:モーニングスター社

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