<新興国eye>タイ中銀、政策金利を据え置き―7会合連続

新興国

2021/3/25 10:36

 タイ中央銀行は24日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を過去最低水準の0.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 中銀は20年2月会合で0.25ポイント引き下げたあと、3月20日には緊急会合を開き、新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)の悪影響により、タイ経済のリセッション(景気失速)懸念が強まったとして、政策金利を0.25ポイント引き下げた。その後、3月25日の定例会合では据え置いたが、パンデミックの悪影響が一段と強まった5月、20年で3回目となる、0.25ポイント利下げを行った。この結果、2月以降の利下げ幅が計0.50ポイントに達し、政策金利も過去最低のゼロ金利水準となったことから、6月会合で現状維持に転換。これで据え置きは7会合連続となる。

 中銀は現状維持を決めたことについて、「タイ経済は引き続き回復している」としたが、「依然として景気の先行きの見通しは不確実で、景気下ブレリスクがある」とした上で、「タイ経済は今後も低金利政策による支援を必要とする。将来、適切、かつ、最も効果的なタイミングで行動するため、限られた政策金利の調整余地を残すことを決めた」と前回同様、金融緩和の効果を見守りながら、景気動向を注視し、再利下げの余地を温存した。

 中銀は今回の会合でも景気の下ブレリスクを指摘したが、最新の経済予測では、新型コロナの第2波感染拡大と観光客の減少を反映し、21年のGDP(国内総生産)見通しを前回予想時の3.2%増から3.0%増に、また、22年も4.8%増から4.7%増に、いずれも下方修正したとしている。

 通貨バーツの為替相場については、「バーツの対ドル相場は他のアジア地域の通貨と一致した動きを示して下落した」としたが、前回会合時と同様、「為替相場の動きを注視する。今後、バーツが上昇に転じた場合、適切な追加措置が必要かどうか検討する」とし、引き続きバーツ高への懸念を示した。バーツ高はタイの輸出を抑制し、景気回復に悪影響を与える可能性がある。

 今後の金融政策については、「政府の景気対策と政府機関との政策協調が景気回復を支えるためには極めて重要だ」とした上で、「中銀の金融政策は引き続き緩和スタンスを維持しなければならない」と当面は金融緩和を維持する考えを示した。また、「さまざまな景気リスクや政府の財政支援措置、特に国内外の新型コロナ感染拡大を注視し、必要に応じ、追加の金融政策手段を取る用意がある」と再利下げの可能性に含みを持たせた。

 さらに、「パンデミックの悪影響を受けているセクターに対し、適切なタイミングで流動性を供給し、また、債務負担を軽減し、労働力などの経済資源をより生産性が高いセクターにシフトする経済構造改革を支援する政策が必要だ」とし、再利下げの余地を残しながら政策金利以外の政策手段の必要性を指摘した。

 次回会合は5月5日に開催される予定。

<関連銘柄>

タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

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