海外株式見通し=米国、香港

米国株:「米国雇用計画」、恩恵受ける企業は?

 バイデン米大統領は、このほど成立した1兆9000億ドル規模の経済対策に続く大規模経済プログラムとして、3月末に2兆2500億ドル規模のインフラ投資計画である「米国雇用計画」を発表した。共和党議員からの反発が予想されるものの、成立すれば米国株投資の潮流に大きく影響を及ぼすものとみられる。

 「道路や橋、高速道路、港湾など公共交通・運輸関連のインフラ再整備」の6210億ドルについては、建設機械・重機のキャタピラー<CAT>への追い風となるほか、気候変動対策の一環としてEV(電気自動車)市場向けに1740億ドルを支出する。公的なEV充電所を2030年までに現在の12倍強の50万カ所に拡充する計画であることから、テスラ<TSLA>のほか、EV向け充電ステーション網運営のチャージポイント<CHPT>やブリンク・チャージング<BLNK>が長期間にわたり恩恵を受けるだろう。

 「清涼な飲料水や高速ブロードバンド整備など各家庭の生活の質向上に関連した施策」に係る6500億ドルでは、上下水道向けのエンジニアリング製品・サービスを提供するザイレム<XYL>、水道公益事業を展開し積極的買収戦略により事業地域を拡大しているアメリカン・ウォーター・ワークス<AWK>が注目される。高速ブロードバンド整備については、5G向け基地局の拡大に伴い計測ソリューションで市場のリーダーであるキーサイト・テクノロジー<KEYS>が恩恵を受けそうだ。

 また、「高齢者や障害者向けの手ごろな価格の地域密着型介護サービスの拡充」の4000億ドルについては、在宅医療やホスピスサービスのプロバイダーとして米39州で事業を展開するアメディシス<AMED>が浮上する。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

香港株:独禁法規制強化と中小零細企業への支援方針

 史上最大とされたアント・グループのIPO(新規上場)は20年11月初めに突如として延期が発表された。これを境に、中国規制当局による金融法規の改正や独禁法規制が一気に加速した。中国巨大ネット企業に対し規制当局による独禁法の網が張られたことが、株式市場では驚きを持って受け止められた。

 「民営経済は税収の50%以上、国内総生産の60%以上、技術革新成果の70%以上、都市部雇用の80%以上、企業数の90%以上を占める」と、習主席の発言に由来し、中小零細企業の重要性を表す「5、6、7、8、9」という数字がある。また、国家統計局によると、18年の中国における中小零細企業は中国全体で、企業数の99.8%、雇用者数の79.4%を占める。このことからも、ネット大手への規制強化がイノベーションを阻害するという懸念よりも、中小零細企業への配慮が優先された事情が透けて見える。

 3月初めに開催された全国人民代表大会(全人代)で政府活動報告が公表され、「大型商業銀行の零細企業向けの包括融資を30%以上増やす」「人員削減を抑えた企業に対し財政や金融などの政策支援を継続する」「プラットフォーム企業の革新発展と国際競争力の向上を後押しするとともに、独占の取り締まりを強化し、公平な市場競争環境を断固として守る」など、中小零細企業の重視、およびネット大手による不当な市場寡占を阻止する当局の決意が盛り込まれている。

 中小零細企業は、このような政府からの後押しを受けて、DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に取り入れることで生産性を高めることが求められていると言えよう。

(フィリップ証券リサーチ部・李一承)

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(写真:123RF)

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