<新興国eye>カンボジア海上油田開発に暗雲、原油生産量伸びず

新興国

2021/4/16 13:11

 3月31日、カンボジア南部のシアヌークビル沖の海上油田ブロックAで石油生産を開始したシンガポール系のクリスエナジーは、ミニフェーズ1Aで掘削した5本の油井からの原油生産量が予測値を大きく下回っていると発表しました。当初の予定では、日量7500バレルを生産できる見込みでしたが、5本の油井の掘削が完了した2月23日から3月30日までの平均生産量は日量2833バレル、最高でも3月27日の3534バレルに留まっているとしています。この結果を分析中とのことですが、この油田の生産性や生産継続性について懸念しているとしています。

 クリスエナジーでは、オランダのコンサルタントSewell & Associates社を第三者評価者として、分析させるとのことです。なお、クリスエナジー社は、債務再編を行い、苦しい資金繰りを繰り返しながら運営を続けていますが、今回の油田開発の成功が債務継続の条件となっていることもあり、出資者・融資機関とも交渉が必要となるものと見られます。

 海上油田ブロックAについては、当初はシェブロンや日本の三井石油開発なども権益を有していましたが、税金問題などでカンボジア政府と折り合いがつかなかったことなどから、現在の権益は、クリスエナジー95%、カンボジア政府5%となっています。

 開発のフェーズ1Aは、ブロックAのうち3083平方キロメートルで、水深50-80メートル程度です。フェーズ1Aでクリスエナジーは、海上プラットホーム1基(24井)と浮体式生産バージ、さらに1.5キロのパイプラインで接続される浮体式貯蔵積出設備(FSO)を投入して、日量3万バレルの原油を生産する計画でした。現在、さらに縮小したミニフェーズ1Aでは、5本の油井で日量7500バレルを目指すとして、20年12月に初の原油生産を開始したところでした。

 海上油田の生産開始は、カンボジアにとっても明るいニュースでしたが、残念な現状となっています。カンボジア政府もクリスエナジーと協議を続けている模様ですが、場合によってはライセンス終了もありうるとコメントしています。今後の状況を注視する必要があるものと見られます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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