ECB、政策金利を据え置き―大規模金融緩和政策を維持
2021/4/23 10:13
<チェックポイント>
●緊急債券買い入れ制度「PEPP」の1兆8500億ユーロ枠を据え置き
●1-3月期GDPはマイナス成長、4-6月期は回復に転じる見通し―ラガルドECB総裁
●PEPPのテーパーリング議論は時期尚早―ラガルド総裁
ECB(欧州中央銀行)は22日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に、下限の中銀預金金利をマイナス0.50%に、上限の限界貸出金利を0.25%に、いずれも据え置くことを全員一致で決めた。据え置きは前回3月会合に続いて8会合連続。市場予想通りだった。
ただ、市場ではECBが出口戦略(量的金融緩和からの脱却を目指す戦略)の議論をいつ始めるのか注目している。早晩、ロックダウン(都市封鎖)など規制解除に向かうとの見通しや、EU(欧州連合)の総額7500億ユーロの復興基金の効果で景気回復が急速に進んで国債利回りが年末にかけて上昇すれば、ECBは現在の1兆8500億ユーロ規模のQE(量的金融緩和)の22年3月以降の延長に消極的になると見ているからだ。
ECBは会合後に発表した声明文の冒頭で、「理事会は超金融緩和政策スタンスを再確認することを決めた」と強調。市場ではユーロ圏の景気回復が本格化すれば、ECBは物価目標も変更するという見方が強っており、声明文の冒頭の「再確認」にはそうした市場の観測をトーンダウンさせる狙いがある。
ECBがQEの縮小を示唆した場合、市場が最も恐れているのは13年5月にFRB(米連邦準備制度理事会)がQE縮小を示唆したのを受け、債券市場で投資家が大規模なろうばい売りを引き起こした、いわゆる「テーパー・タントラム(かんしゃく)」だ。長期金利(借り入れコスト)を急変動させ、景気回復を腰折れさせる恐れがある。その意味で、ECBが声明文の冒頭で、「超金融緩和政策スタンスを再確認」という文言を敢えて用いたことは市場に安心感を与えた。
出口戦略をめぐっては、ECBの周辺で議論が出始めている。ベルギー中銀のピエール・ブンシュ総裁は4月の講演で、「ECBは出口戦略について適切な時期が来たら議論を開始すべきだ」と発言している。また、独中銀のクラース・ノット総裁も「7-9月期からQEのテーパーリングを開始すべき」と述べている。仏中銀のフランソワ・ビルロワドガロー総裁もマイナス金利とインフレに関するフォワードガイダンス(金融政策の指針)を据え置いたまま、パンデミック(感染症の世界的大流行)対応の緊急的なQEからパンデミック前の旧来のQEへの移行を提案している。
しかし、ラガルド総裁は会合後の記者会見でもPEPPによる国債買い入れの縮小について、「PEPPのテーパーリングの議論はまだECB内で行われておらず、時期尚早だ」とし、その上で、「サービス業は底入れした可能性があるが、まだ、(ユーロ圏経済には)短期的に多くの景気下振れリスクがある。従って、ECBは好ましい金融状況を維持することに焦点を置いている。(長期金利が上昇し)金融市場がタイトになった3月に国債買い入れを増やし、その後もかなりの量を買い入れたが、今後も買い入れペースの加速を続ける」と述べ、短期的な景気下ブレリスクを強調した。また、総裁は、テーパーリングの議論は今後の経済データにかかっている」とし、「(時間的経過という)時間で決められるものではない」とした。
ラガルドECB総裁はユーロ圏の景気見通しについて、前回会合時と同様、「1-3月期GDP(国内総生産)が前期比マイナス成長になる可能性がある」とした上で、「4-6月期は回復に向かう可能性がある」との見方も示した。
今後の金融政策については、「今後は経済予測の期間中、インフレ見通しが2%上昇をやや下回る水準(物価目標)に十分に収束するまで、ECBの政策金利は現在の水準か、または、一段と低い水準となることが予想される」と前回同様、将来の利下げに含みを残した。これはECBが19年9月に初めて採用した、ECBが市場と対話を重視し、前もって将来における金融政策の方針を表明するフォワードガイダンスだが、市場では利下げ余地はないとみている。
また、長期金利の上昇について声明文では、「金融市場のタイトな状況(長期金利の上昇)は、パンデミックにより今後予想されるインフレの道筋が下ブレする悪影響を阻止する目的とは矛盾するものであり、タイトな金融状況を防ぐ観点からわれわれは資産買い入れを柔軟に行う」とした。
次回の会合は6月10日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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