<新興国eye>タイ中銀、政策金利を据え置き―8会合連続

新興国

2021/5/6 14:11

 タイ中央銀行は5日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を過去最低水準の0.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 中銀は20年2月会合で0.25ポイント引き下げたあと、3月20日には緊急会合を開き、新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)の悪影響により、タイ経済のリセッション(景気後退)懸念が強まったとして、政策金利を0.25ポイント引き下げた。その後、3月25日の定例会合では据え置いたが、パンデミックの悪影響が一段と強まった5月、20年で3回目となる、0.25ポイント利下げを行った。この結果、2月以降の利下げ幅が計0.50ポイントに達し、政策金利も過去最低のゼロ金利水準となったことから、6月会合で現状維持に転換。据え置きはこれで8会合連続となる。

 中銀は現状維持を決めたことについて、「第3波のパンデミックで国内消費が打撃を受け、観光産業の回復にも悪影響を及ぼ可能性があるため、タイ経済の成長率は今後かなり鈍化すると思われる」と景気先行き懸念を示した上で、「現在の政策金利はすでに景気回復を支えるため、低水準になっている。利下げよりも的を絞った形での企業や家計部門への流動性の潤沢供給の方が債務負担を減らすことができる。こうした判断で政策金利を据え置いた」としている。

 前回3月会合では、「タイ経済は今後も低金利政策による支援を必要とする。将来、適切、かつ、最も効果的なタイミングで行動するため、限られた政策金利の調整余地を残すことを決めた」と再利下げの余地を温存したが、今回の会合では追加利下げを実施する前に量的金融緩和(QE)による流動性の潤沢供給を優先させたい考えを示した。

 今後の金融政策については、「政府の景気対策と政府機関との政策協調が景気回復を支えるためには極めて重要だ」とした上で、「われわれの金融政策は引き続き緩和スタンスを維持しなければならない」とし、当面、金融緩和の政策スタンスを維持する考えを示した。

 中銀は前回3月会合で最新の経済予測を発表した際、新型コロナ感染拡大と観光客の減少を反映し、21年のGDP(国内総生産)見通しを1月予想時の3.2%増から3.0%増に、また、22年も4.8%増から4.7%増に、いずれも下方修正したが、ワクチン接種が遅れていることから経済見通しに警戒感を強めている。財務省も4月29日に21年成長率見通しを1月予想時点の2.8%増から2.3%増に下方修正し、警戒感を強めており、政府は20年4月に承認した1兆バーツの景気支援策の消化率が67%に達したことを受け、3800億バーツの追加景気支援策を検討している。

 次回会合は6月23日に開催される予定。

<関連銘柄>

 タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、

 上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ