キャピタルゲイン増税による米国株への影響について

バイデン大統領がかねてより宣言していた、年100万ドル以上の所得がある富裕層に対してキャピタルゲイン税の税率引き上げが現実味を帯びてきました。

バイデン氏は昨年の大統領選の際に富裕層に対する課税と労働者への再分配の強化を政策として掲げていました。

キャピタルゲインへの最高税率は、富裕層にとっては他の所得に係る最高税率比べると低くなっています。

バイデン氏はそこにメスを入れ、最高税率を引き上げようとしています。

もしこれが実現されれば、1921年以来、約100年ぶりの高水準となります。

米国株式市場だけでなく、今ブームが巻き起こっている仮想通貨市場や日本の株式市場にまで大きな影響を与えると考えられます。

今回は、キャピタルゲイン増税による米国株式市場への影響について見ていきます。

増税に関して

バイデン大統領は富裕層に対するキャピタルゲイン税の税率を39.6%と、現行のほぼ2倍に引き上げることを提案する見通しであると、複数の関係者が明かしました。

所得が100万ドル(約1億800万円)以上の個人に対するキャピタルゲイン税率を引き上げた場合、現在20万ドル以上の所得に係る純投資所得税の3.8%と合わせて43.4%になる可能性があります。

ホワイトハウスのサキ報道官によれば、育児や幼児教育、国内労働者の競争力強化に向け投資を拡大するという大統領の決意は固く、富裕層や余裕のある企業・事業者らが負担すべきだと大統領は考えているとしています。

バイデン大統領の増税政策が実現するには議会での可決が必要です。

現在与党である民主党が上下院ともに主導権を握っていますが、上院に関して議席数は同数であり、ハリス副大統領が議長を兼務することで事実上の多数派になっているだけです。

今回の増税案がそのまま実現するとは考えられません。

幾分か増加幅が減ることになると思われますが、増税自体は実施されると考えられるため、市場への影響が大きいことには変わりありません。

フェデレーテッド・エルメスのポートフォリオマネジャー兼株式戦略担当のスティーブ・キアバロン氏は、今回広まっているバイデン大統領の増税案は、積極的な交渉戦略と捉えるべきだとしています。

少なくとも最初は最大で最悪、かつ最も大胆な政策提案が提示されていると考えるべきだとし、39.6%という増税案は通らないものの、29%でなら実現するだろうと述べています。

またキャピタルゲインに係る税金は、米国では州や市が追加的な税を独自に課しています。

もし39.6%の増税案が通った場合、カリフォルニア州では合計税率は56.7%、ニューヨーク市では68.2%にもなります。

参考として米国以外のキャピタルゲインに係る税率は、日本、イギリスでは20%、ドイツでは26.375%となっています。

市場の影響

キャピタルゲインへの増税は市場への影響が大きく、今回の関係者情報が流れた途端、S&P500種株価指数は前日比で0.9%下落しました。

米国株式市場は、昨年のコロナショック以来目覚ましい伸びを示しており、売りどころを探っている投資家も多いです。

そんな中での今回の増税は恰好の利益確定材料となり得ます。

特に大きく上昇したアップルなどのテクノロジー銘柄や、昨年4月以降400%近く値上がりしたテスラなどがそのあおりを大きく受けそうです。

キャピタルゲイン課税の税率が増税されると、配当金課税率を上回ることになり、配当金銘柄の魅力が高まります。

そうなると、資金がテクノロジー銘柄などの無配当銘柄から高配当銘柄に移行する可能性があります。

また市場から資金を引きあげる投資家も出てくると考えられるため、コロナウイルスによる経済の低迷からまだ抜けきっていない中では、回復の勢いが失速する原因となりえます。

昨年から勢いを増してきている暗号資産市場にも大きな影響があります。

ビットコイン価格は増税報道前から下落トレンド入りしていましたが、その勢いを後押した形になりました。

報道前の5万5,000ドル台から5万ドルを割り込み、今もなお下がり続けています。

この下落は増税だけが原因ではありませんが、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏がビットコインへ多額の投資をしたことが話題になるなど、富裕層の多くが暗号資産へ資金を流しており、増税前に利益確定の売却に走ることは十分に考えられ、じわじわと下値を拡大する可能性があります。

ただ、株式市場に関しては一概には言えません。

増税政策はバイデン氏が大統領選に勝った時点でわかっていたことであり、織り込み済みとの見方もあるからです。

また株式市場の魅力がたとえ少なくなっても資金を移す場所が他になく、そこまで影響はでないとも言われています。

このように増税報道は市場に混乱をもたらしました。

慌てずに冷静に判断していくことが大事になります。

くれぐれも慎重に行動しましょう。

高配当銘柄紹介

キャピタルゲインへの増税が実現した場合、配当銘柄への資金移転を行った方がよいかもしれません。

特に長期の資産形成を目的としている人が多い個人投資家にとっては、ハイリスクハイリターンな銘柄に投資を行っても税金でほとんど持っていかれてしまっては、意味がありません。

それならば、安定した業績を保ちながら高い配当を行っている銘柄へ投資を行った方が良いでしょう。

そこで代表的な高配当銘柄をいくつか簡単に紹介します。

アッヴィ

アッヴィ<ABBV>はアメリカに本社を置く、各種医薬品の研究・開発・製造・販売を行うバイオ医薬品メーカーです。

■直近の業績

・純売上高…138.58億ドル(前年同期比59%増)

・営業利益…37.53億ドル(前年同期比51%減)

・同社に帰属する純利益(GAAP)…0.36億ドル(前年同期比99%減)

・同社に帰属する純利益(non-GAAP)…52.25億ドル(前年同期比59%増)

・希薄化後一株当たり純利益…0.01ドル(前年同期比99%減)

・調整済希薄化後一株当たり純利益…2.92ドル(前値同期比32%増)

■配当

日付は権利落ち日を記しています。

・2021年04月14日…配当:1.3ドル(配当利回り:4.69%)

・2021年01月14日…配当:1.3ドル(配当利回り:4.79%)

・2020年10月14日…配当:1.18ドル(配当利回り:5.86%)

・2020年07月14日…配当:1.18ドル(配当利回り:5.14%)

・2020年04月14日…配当:1.18ドル(配当利回り:5.07%)

・2020年01月14日…配当:1.18ドル(配当利回り:5.04%)

アルトリア・グループ

アルトリア・グループ<MO> は米国のたばこ・ワイン製造持株会社です。

■直近の業績

・純売上高…63.04億ドル(前年同期比5%増)

・営業利益…25.81億ドル(前年同期比6%増)

・純利益…19.24億ドル(前年同期比37.33億ドル増)

・希薄化後EPS…1.03ドル(前年同期比2.03ドル増)

■配当

日付は権利落ち日を記しています。

・2021年03月24日…配当;0.86ドル(配当利回り:7.23%)

・2020年12月24日…配当:0.86ドル(配当利回り:8.09%)

・2020年09月14日…配当:0.86ドル(配当利回り:8.02%)

・2020年06月12日…配当:0.84ドル(配当利回り:8.03%)

・2020年03月24日…配当:0.84ドル(配当利回り:9.31%)

コカ・コーラ

コカ・コーラ<KO>はコカ・コーラをはじめとする清涼飲料水を製造販売する、世界最大の飲料メーカーです。

■直近の業績

・純売上高…90.20億ドル(前年同期比5%増)

・営業利益…27.22億ドル(前年同期比14%増)

・同社に帰属する純利益…22.45億ドル(前年同期比19%減)

・希薄化後一株当たり純利益…0.52ドル(前年同期比19%減)

■配当

・2021年06月14日…配当:0.42ドル(配当利回り:3.08%)

・2021年03月12日…配当:0.42ドル(配当利回り:3.11%)

・2020年11月30日…配当:0.41ドル(配当利回り:3.35%)

・2020年09月14日…配当:0.41ドル(配当利回り:3.27%)

・2020年06月12日…配当:0.41ドル(配当利回り:3.53%)

・2020年03月13日…配当:0.41ドル(配当利回り:3.61%)

https://www.morningstar.co.jp/redirect/kabushiki_210122.htm

※この記事はモトリーフールジャパンからの許諾を受けて掲載しており、著作権は情報提供元に帰属します。

(イメージ写真提供:123RF)

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