<新興国eye>カンボジア電子決済大手ウイングが商業銀行ライセンスを取得

新興国

2021/5/14 11:26

 4月26日、カンボジアの電子送金大手ウイングは、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行から、商業銀行ラインセンスを授与されたと発表しました。ウイングは、携帯電話を使った低コストの電子送金から始まり、これまでは特殊銀行でしたが、今回のライセンスで預金の受入れなども可能な商業銀行となります。新銀行名は、「ウイング銀行」(Wing Bank <Cambodia> Plc)となります。

 カンボジアの地方部には銀行の支店などがあまりなく、金融へのアクセスに困難があります。こうした中で、ウイングは、9300カ所の代理窓口「ウイング・キャッシュ・エクスプレス」で現金の授受が可能です。ウイングは、金融サービスだけでなく、電子支払のウイング・ペイ、電子商取引プラットフォームのウイング・モールなども展開しています。スマートフォンで利用可能なウイング・マネー・アプリでも、今後は預金・貸付・送金などの金融サービスが可能となるとしています。さらに、法人向けにウイング・SMEというサービスも開始し、従業員への給与振込や取引先との決済サービスなども提供していく計画です。

 ウイングのようなオンライン・デジタル・サービスを得意とする銀行が、カンボジアに出現したことは、先進国が辿ってきた道とは違う発展の道筋をIT技術で新たに切り開いていくものと評価できます。銀行口座の保有率も低く、金融へのアクセスが課題となっているカンボジアで、新たな形での発展が進み、金融包摂に向けて大きな役割を担うことが期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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