<新興国eye>インドネシア中銀、政策金利を据え置き―市場予想通り

新興国

2021/5/26 12:26

 インドネシア中央銀行(BI)は25日の理事会で、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を過去最低水準の3.50%に据え置くことを決めた。市場予想通りだった。過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も2.75%、翌日物貸出ファシリティー金利も4.25%と、いずれも据え置いた。最近の米長期金利の上昇で通貨ルピア安が進んでいることを受け、ルピア相場を支え、景気を支援するためとしている。

 中銀は新型コロナのパンデック(感染症の世界的大流行)による景気悪化を受け、景気回復を支援するため、20年の2月から利下げを再開。7月まで4会合連続で利下げを決めた。利下げ幅が計1.00ポイントに達したことから8月は据え置きに転換。10月まで3会合連続で現状維持とした。しかし、国内経済が2期連続でマイナス成長となったため、11月会合で7月以来、4カ月ぶりに0.25ポイントの利下げに踏み切った。利下げ幅が計1.25ポイントに達したため、利下げ効果を見るため、12月会合で据え置きに転じた。しかし、21年2月会合で3会合ぶりに利下げを再開。利下げ幅も計1.50ポイントに広がっている。据え置きは前回4月会合に続いて3会合連続。

 中銀は会合後に発表した声明文で、政策金利を据え置いたことについて、「今回の据え置き決定はインフレが今後も低水準で抑制される見通しの中で、(ドルに対し下落している)通貨ルピア相場を安定させ、また、景気を回復させる必要性と合致する」とルピア相場の行き過ぎた下落を阻止することに加え、景気回復を一段と強めたい考えを示した。

 今後の金融政策についても、前回会合時と同様、「景気回復の勢いを支援するため、金融緩和政策とマクロ・プルーデンスな政策(金融システムの安定を目指した政策)のポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を最適化していく」とし、具体的にはルピア相場の安定(過度の相場下落阻止)のため、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映した動きとなるよう、(ドル売り・ルピア買いの)市場介入を実施すること、また、引き続き、金融緩和スタンスを補完するため、公開市場操作(オペ)などの金融市場ツールを強化するとしている。

 中銀のペリー・ワルジョ総裁は会合後の会見で、「もしポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)への変更が必要になれば、われわれは政策金利を調整するよりも前に、まず流動性に関する金融政策手段を検討する」としている。

 同総裁は3月会合後の会見では、「追加利下げによる行き過ぎた景気刺激がインフレと長期金利を上昇させるだけでなく、ルピア相場の下落を助長することに配慮した」とし、「追加利下げ余地がなくなってきた」ことを認めている。この発言以降、市場では中銀は利下げサイクルに終止符を打ったとみている。

 中銀はポリシーミックスの一環として、20年7月初め、総額903兆4600億ルピアの新型コロナ危機対策費を政府と共同で負担するため、397兆5600億ルピアの新発国債の直接引き受けを含め、全体の6割超にあたる574兆4000億ルピアを負担することで合意し、20年の年間で約473兆4200億ルピア相当のSBN(短期国債)を買い入れた。21年に入ってからも5月21日までに新たに108兆4300億ルピア相当のSBNを買い入れている。

 インフレ見通しについては、4月のインフレ率は前年比1.42%上昇と、3月の1.37%上昇や2月の1.38%上昇を上回ったが、「依然低水準だ」とし、その上で、「21年のインフレ率が物価目標(3%上昇±1%)内に抑制することにコミット(積極的に関わる)している」と物価目標を据え置いた。21年の景気見通しについても、前年比4.1-5.1%増に据え置いた。

 次回の金融政策決定会合は6月16-17日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、iSエマジン<1582.T>、

 アセアン50<2043.T>

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