ECB、大規模金融緩和と超低金利政策の維持を決定―出口議論は時期尚早
2021/6/11 10:30
<チェックポイント>
●PEPPのテーパリング議論はかなり時期尚早―ラガルドECB総裁
●ユーロ圏経済は下期から力強く回復する―ラガルド総裁
●21年と22年GDPおよびインフレ見通しを上方修正
ECB(欧州中央銀行)は10日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に、下限の中銀預金金利をマイナス0.50%に、上限の限界貸出金利を0.25%に、いずれも据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。据え置きは前回4月会合に続いて9会合連続。
今後の金融政策の方針(フォワードガイダンス)について声明文で、「今後は経済予測の期間中、インフレ見通しが2%上昇をやや下回る水準(物価目標)に十分に収束するまで、ECBの政策金利は現在の水準か、または、一段と低い水準となることが予想される」とし、将来の利下げに含みを残したが、市場では利下げ余地はないとみている。
また、今回の会合でもECBは20年12月、QE(量的金融緩和)を一段と強化するため、新型コロナのパンデミックス(感染症の世界的大流行)対策として導入を決めたPEPP(パンデミック緊急債券購入プログラム)の買い入れ枠1兆8500億ユーロを現状通り据え置いた。
長期金利の上昇については、「金融市場のタイトな状況(長期金利の上昇)は、パンデミックにより今後予想されるインフレの道筋が下ブレする悪影響を阻止する目的とは矛盾するものであり、タイトな金融状況を防ぐ観点からわれわれは資産買い入れを柔軟に行う」とした姿勢を維持した。
PEPPは、既存の資産買い入れプログラム「APP」とは別に導入されたもので、債券買い入れを増額することにより、ユーロ圏域内の長期金利の低下を促し、企業や家計の借り入れコストを引き下げ、景気を支援するほか、ディスインフレ(物価上昇率の鈍化)を防ぐことを狙いとしている。ECBはインフレ率を物価目標の2%弱に短期間で戻す必要性を指摘している。
市場ではECBはQEのテーパリング(段階的縮小)をいつ始めるのかに注目している。
出口戦略をめぐっては、ECBの周辺で議論が始まっている。ベルギー中銀のピエール・ブンシュ総裁は4月の講演で、「ECBは出口戦略について適切な時期が来たら議論を開始すべきだ」と発言している。また、ドイツ中銀のクラース・ノット総裁も「7-9月期からテーパリングを開始すべき」と述べている。
たが、ラガルドECB総裁は会合後の記者会見でもPEPPによる国債買い入れの縮小を今秋にも決めるかどうかについて、前回会合時と同様に、「PEPPのテーパリングの議論はかなり時期尚早だ」とした上で、「財政刺激策を時期尚早に終わらせることはユーロ圏の景気回復を腰折れにする」と述べている。
ECBは最新のインフレ見通しを明らかにした。21年のインフレ率を1.9%上昇と、前回3月予測の1.5%上昇から引き上げ、22年も1.5%上昇(前回予測は1.2%上昇)と引き上げたが、いずれもエネルギー価格の上昇と一時的要因によるものとしている。23年の見通しは1.4%上昇に据え置かれた。
また、GDP(域内総生産)見通しについては、1-3月期GDPが前期比マイナス0.3%と、20年10-12月期の同マイナス0.7%に続いて、2四半期連続の減少となり、リセッション(景気後退)となったが、ラガルド総裁は、「4-6月期以降はワクチン接種の加速や経済再開により、回復に向かい、下期(7ー12月)には景気は力強く上向く」との見方を示した。21年の成長率は4.6%増、22年は4.7%増、23年は2.1%増と予想。これは前回予測から21年(4%増)と22年(4.1%増)が上方修正され、23年(2.1%増)は据え置かれている。
次回の会合は7月22日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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