FOMC、政策金利と量的金融緩和政策を据え置き―利上げ23年に前倒しとの見方が大勢に

経済

FOMC

2021/6/17 10:08

<チェックポイント>

●21年コアPCEインフレ率予想を2.2%上昇から3.0%上昇に引き上げ

●21年GDP予想を前回予想の6.5%増から7.0%増に上方修正

●ドットチャートは極めて不確実、利上げ転換はずっと先―パウエルFRB議長

 FRB(米連邦準備制度理事会)は16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を現状のゼロ金利(0-0.25%)に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 また、量的金融緩和(QE)政策の質と量の両面からの調整(見直し)についても、現状維持とした。市場では現在の堅調な株式相場を支えている国債買い入れの規模の段階的縮小、(テーパリング)の開始時期に注目しているが、FRBは今回のFOMCでも国債買い入れ目標を月800億ドル、MBS(不動産担保証券)を月400億ドルとするQEを継続する考えを示した。

 FRBはFOMC後に発表した声明文で、「ワクチン接種の進展はコロナ危機が経済に与える影響を継続して緩和する可能性が高い」とし、「経済見通しに対するリスクは依然残る」としたものの、前回4月FOMCよりも経済見通しについてはやや楽観的なトーンに変更した。

 ただ、最近のインフレの加速については、「インフレは主に一時的要因で加速している」と認めたものの、「一過性」と判断し、インフレ懸念は乏しいことを改めて強調した。

 また、18人のFOMC委員による最新の6月経済・金融政策見通しを公表し、21年と22年のインフレ率見通しを引き上げた。その上で、23年の金利予測を示すドットチャートで、大半の13人の委員が23年の利上げを予想(前回予想は7人)し、中央値では23年末までに2回の利上げ(1回の利上げ幅を0.25ポイントと換算)を予想していることが明らかになった。

 このドットチャートを受け、米債券市場では早期利上げ観測が広がり、10年国債利回りはFOMCの終了前に比べ、0.07%ポイント上昇の1.57%と急伸し、ダウ工業株30種平均は急落した。

 6月経済・金融政策見通し(中央値)によると、PCE(個人消費支出)物価指数でみたインフレ見通しは21年のコア指数が3%上昇(前回予測は2.2%上昇)、22年は2.1%上昇(同2.0%上昇)といずれも引き上げられ、23年は2.1%上昇(同2.1%上昇)と据え置かれた。21年の全体指数も3.3%上昇(同2.4%上昇)、22年は2.1%上昇(同2.0%上昇)、23年も2.2%上昇(同2.1%上昇)と、いずれも引き上げられた。

 GDP(国内総生産)見通しは21年が7.0%増(同6.5%増)と上方修正され、22年は3.3%増(同3.3%増)と据え置かれたが、23年は2.4%増(同2.2%増)と上方修正された。失業率は21年が4.5%(同4.5%)と据え置かれたが、22年は3.8%(同3.9%)と引き下げ。23年は3.5%(同3.5%)と据え置かれた。

 パウエルFRB議長はFOMC後の会見で、テーパリングについての議論を開始したことを認めた上で、米経済はテーパリングが適切と考えられる状況にはまだ至っていないと判断したとしている。

 また、パウエル議長は、「ドットチャートは極めて不確実で、将来の金利調整の大予測にはならない。雇用の最大化には程遠く、利上げ転換はずっと先の話だ」と早期利上げ観測を打ち消した。これを受け、急落していた株価が一時、持ち直した。

 このほか、FRBは金融市場の安定策として、20年3月15日のFOMCで、もう一つの政策金利として設定しているIOER(市中銀行がFRBに預け入れることが義務付けられている準備預金の所要準備を上回る超過準備預金に付与される金利)を0.1%に引き下げたが、今回のFOMCでは6月17日から0.15%に引き上げる。超過準備への付利金利を引き上げる技術的調整を実施した格好だが、パウエル議長は「これは金融政策のスタンスに影響するものではない」とし、利上げ効果を期待する見方を否定した。

<関連銘柄>

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(イメージ写真提供:123RF)

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