<新興国eye>タイ中銀、政策金利を据え置き―9会合連続

新興国

2021/6/24 12:52

 タイ中央銀行は23日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を過去最低水準の0.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場予想通りだった。

 中銀は20年2月会合で0.25ポイント引き下げたあと、3月20日には緊急会合を開き、新型コロナのパンデミック(感染症の世界的大流行)の悪影響により、タイ経済のリセッション(景気後退)懸念が強まったとして、政策金利を0.25ポイント引き下げた。その後、3月25日の定例会合では据え置いたが、パンデミックの悪影響が一段と強まった5月、20年で3回目となる、0.25ポイント利下げを行った。この結果、2月以降の利下げ幅が計0.50ポイントに達し、政策金利も過去最低のゼロ金利水準となったことから、6月会合で現状維持に転換。据え置きはこれで9会合連続となる。

 中銀は現状維持を決めたことについて、「第3波のパンデミックで、タイ経済の回復は従来予測より遅れ、一段とまだら模様の回復の様相となっている。タイ経済の見通しに対するリスクは依然として、かなりの景気下ブレリスクだ」と景気の先行きに強い懸念を示した上で、「現在の政策金利はすでに景気回復を支えるため、低水準になっている。利下げよりも的を絞った形での企業や家計部門への特別融資制度を通じた流動性の潤沢供給や債務再構築(限定的な債務返済の凍結など)の方が企業や家計の債務負担を減らすことができる。最も効果的なタイミングで、限られた政策金利の調整余地を使うことを決めた」とした。

 今後の金融政策については、「政府の景気対策と政府機関との政策協調が景気回復を支えるためには極めて重要だ」とした上で、「われわれの金融政策は引き続き緩和スタンスを維持しなければならない」とし、当面は金融緩和の政策スタンスを維持する考えを示した。さらに、「タイ経済の景気見通しに影響を与える第3波の新型コロナ感染拡大とワクチン接種の普及と有効性、政府の財政や金融、融資での景気支援措置の効果を注視し、必要に応じ、追加の金融政策措置を講じる用意がある」とした。

 中銀は今回の会合で最新の6月経済予測を発表した。それによると、新型コロナ感染拡大と観光客の減少を反映し、21年のGDP(国内総生産)見通しを前回3月予想時の3.0%増から1.8%増に、22年も4.7%増から3.9%増に、いずれも下方修正し、ワクチン接種が遅れていることから経済見通しに警戒感を強めている。観光客の見通しについても21年は前回予測の300万人から70万人、22年も2150万人から1000万人と、大幅に減少すると予想している。

 インフレ見通しは、全体指数ベースで21年が1.2%上昇(前回予想は1.2%上昇)、22年は1.2%上昇(同1%上昇)と予想。21年のコア指数は0.2%上昇(同0.3%上昇)、22年は0.3%上昇(同0.4%上昇)と、いずれも引き下げている。

 政府は景気減速に警戒感を強めており、20年4月に承認した1兆バーツの景気支援策の消化率が67%に達したことを受け、6月1日に家計への現金給付などを含む1400億バーツ(約4882億円)の追加景気支援策を決めている。

 次回会合は8月4日に開催される予定。

<関連銘柄>

タイSET<1559.T>、アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

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