脱炭素に投資して樹も植える、大和アセットの「カーボンZERO」で始める社会貢献
2021/6/29 14:58
国内でもESG(環境・社会・企業統治)投資の機運が高まり、資産形成にあってもESGやSDGs(持続可能な開発目標)に貢献する投資を行いたいと考える投資家が増えている。ただ、投資された資金が「社会の持続可能な発展にどの程度貢献しているのか」という点については、なかなか伝えにくいのが現実だ。大和証券グループは、大和証券で取り扱う新ファンド「脱炭素テクノロジー株式ファンド(愛称:カーボンZERO)」(設定・運用:大和アセットマネジメント)の信託報酬等の一部を使って、国内で植樹活動を行うプロジェクトを開始する。ファンドを購入することが、樹を植えることに直接つながることで、社会貢献の実感が得やすい取り組みといえる。
新ファンド「カーボンZERO」は、日本を含む世界の株式等の中から、脱炭素社会の実現に向けたソリューションを提供する企業に投資するファンド。日本も含め主要先進国は、「2050年カーボンニュートラル」という共通目標を掲げているが、この目標を達成するためには、新エネルギーの開発や効率的な利用のために、様々な課題解決の必要があるといわれている。その研究開発投資に、国家レベルで予算を投下することを主要国が表明しているが、現実的な課題解決策(ソリューション)を提供するのは、上場企業をはじめとした民間企業が担っていくものと考えられる。それらの企業に投資し、信託財産の成長をめざすのが、「カーボンZERO」だ。
実際に、企業の技術等を評価して投資先を決定するのは、米国最大級の生命保険会社のニューヨークライフ・インシュアランスカンパニー傘下の運用会社「カンドリアム・インベスターズ・グループ」の欧州法人であるカンドルアム・ベルギー・エス・エーが行う。同社は、創業時よりESG投資に積極的に取り組み、グループとして強みを持つグローバルテーマ株チーム、ファンダメンタル株チーム、ESGチームが協業することで、当ファンドの目的に相応しい企業を選定し、ポートフォリオを構築する。さらに、投資先企業のCO2排出量を算出し、カンドリアム社がグリーンプロジェクトに資金拠出することによって、ファンドとして「カーボンゼロ」をめざすユニークな仕組みを取り入れている。
新ファンドの設定は、7月12日。手数料は購入時手数料が2000万円未満で3.30%(税込み)~5億円以上0.55%(同)。運営管理費用(信託報酬)は年1.837%(同)。7月1日から当初募集が始まる。
このファンドの仕組みに加えて、今回の植樹プロジェクトは、大和証券と大和アセットマネジメントが寄付主体となって、「カーボンZERO」の毎年2月末時点の純資産総額に応じて植樹のための寄付を年1回行う。寄付先は、2005年1月から全国各地の伐採跡地など森をつくるべき場所に樹を植える活動を行っている認定NPO法人環境リレーションズ研究所が運営する植樹プロジェクト「Present Tree」。寄付金は、5000円ごとに1本の植樹ができ、この樹が育って森を作るようになるよう現地の森林組合等によって10年間保育管理されることに使われる。
「カーボンZERO」を購入した投資家は、大和証券グループ本社と大和アセットマネジメントの公式ホームページ上で寄付額の実績が確認でき、また、大和アセットマネジメントが発行する「カーボンZERO」のファンドレターで植樹活動や森が育つ様子の報告が受けられる。そして、毎年2月末時点で500万口以上保有していると「植樹証明書」が届けられる。植樹証明書には、苗木の里親として名前が記載されるほか、植樹場所や植樹本数が記載されている。
大和証券グループは2021年5月に経営ビジョン「2030Vision」を策定し、「貯蓄からSDGsへ」をコアコンセプトに、資金循環の仕組みづくりを通じたSDGsの実現を目指すという方針を明らかにしている。今回の植樹プロジェクトは、このような取り組みの一環としている。
国内で関心が高まっている「ESG投資」を本当に持続可能な社会の形成につなげる運動にできるかというのは、今後の関係者の取り組み次第といえる。運用会社としては、商品企画の点でESGやSDGsの観点を組み入れた商品が出るようになっているが、今回の大和証券グループの取り組みのように販社と協力することによって、より直接的に社会貢献の効果が明らかな取り組みを行うことも可能になる。各社各様に、様々な取り組みが活発に行われることによって、ESG/SDGsの考えが資産運用の世界に浸透していくことが期待されている。
提供:モーニングスター社
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