海外株式見通し=米国、香港
【米国株】防衛企業に追い風、対中政策や宇宙開発
6月24にバイデン米大統領が超党派の上院議員団との間で合意した「米国雇用計画」の修正案は、5780億ドルが新規支出として充てられるほか、各分野で毎年度支出される分と合わせた支出規模が8年間にまたがり約1.2兆ドルとされている。これに加えて、6月30日にホワイトハウスで気候変動対策を担うマッカーシー大統領補佐官が、二酸化炭素(CO2)排出量の削減を図る基準の「クリーン電力基準(CES)」、および再生可能エネルギーをめぐる税控除がインフラ投資計画に係る第2弾の「最重要項目」として必要不可欠と述べるなど、インフラ投資への期待は高まりつつある。
また、地政学リスクの高まりを見据えた中・長期投資の観点も重要性を増し始めた。7月1日、中国共産党の習近平総書記が同党創立100年の祝賀式典の演説で台湾問題に関し、祖国の完全統一を実現することは共産党の歴史的任務と強調するとともに、軍事力についても世界一流の軍隊をつくりあげると述べた。
習氏は来年秋の党大会において、前例のない3期目(2027年まで)の総書記ポストを視野に入れるとみられる。米国は軍事面で台湾支援を明確にしており、習総書記の3期目を見据えた軍事・防衛需要の高まりは避けられないだろう。主要な軍事・防衛企業は、他方で航空・宇宙関連企業という側面もあり、新型コロナウイルスワクチンの接種普及に伴う経済活動の正常化の恩恵を受けやすいことからも狙い目だ。
宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック・ホールディングス<SPCE>が一般客の宇宙旅行に関して米当局の認可を得たことも、これらの企業の今後の宇宙関連事業への追い風となる。米国の主要防衛関連企業の売上高(非防衛産業含む)上位6社は、ボーイング<BA>、ロッキード・マーチン<LMT>、レイセオン・テクノロジーズ<RTX>、ゼネラル・ダイナミクス<GD>、ノースロップ・グラマン<NOC>、ハネウェル・インターナショナル<HON>である。
【香港株】米中対立がIPO活性化につながるか
7月4日、中国のネット規制当局は、中国配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)<DIDI>のアプリで個人情報の収集と利用に関する重大な違反を確認したと発表し、スマホアプリのダウンロードの停止を命じた。さらに、6日には中国政府が中国企業の海外上場規制を強化すると発表された。中国当局は、滴滴の米市場への上場に伴う情報開示の拡大により、同社が持つ膨大なデータが外国に流出する可能性を警戒したとみられる。
2018年10月に当時の米トランプ政権のペンス副大統領が、中国が貿易障壁や強制技術移転、知財窃盗など不当な政策で米国に不利益を与えてきたという演説を行い、米中「新冷戦」が幕を開けたと言われた。また、中国の工場で製造されたサーバー用のマザーボードにバックドアとして利用することを狙った超小型マイクロチップがひそかに仕込まれたのではないかという疑念も広まった。米国が先に仕掛けた対中強硬策を今度は中国が仕返しをしているかのようだ。
中国では、17年6月に「インターネット安全法」が施行され、中国で収集したデータを中国で保存すること、海外に持ち出す際には当局の審査を受けることなどが義務付けられていた。さらに今年6月、全国人民代表大会(全人代)常務委員会で「データ安全法」が成立。同法はデータ収集行為が「中国の国家安全を損ねる」と判断された場合、国外での行為に対しても法的責任を追求するというもの。また、全人代常務委で個人情報の国外持ち出し制限を含む「個人情報法」を審議中だ。
そうした中、米国上場廃止を想定した中国企業による香港市場への重複上場が加速することが見込まれる。このため、結果的に香港市場が活況となる可能性がある。大型IPO(新規上場)の活発化を受けて、香港取引所の今年1~3月期は、営業収益が前年同期比49%増、純利益が同70%増と堅調だった。
(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)
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(写真:123RF)
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