米6月中古住宅販売件数、前月比1.4%増の年率586万戸―市場予想下回る

経済

2021/7/26 10:01

<チェックポイント>

●6月販売件数、5カ月ぶり増加―3月以来3カ月ぶり高水準

●深刻な供給不足と価格上昇が販売を抑制

●NAR、「住宅価格の上昇ペースは年末までに鈍化する」と予想

 NAR(全米不動産業協会)が22日発表した6月の中古住宅販売件数(季節調整済み)は前月比1.4%増の年率換算586万戸と、3月(601万戸)以来3カ月ぶりの高水準となったが、市場予想の590万-593万戸を下回った。市場予想を下回ったのは、住宅供給(在庫)が過去最低水準にまで落ち込んでいるため、売り手市場となって住宅価格が高騰し、住宅購入者のアフォーダビリティ(住宅取得能力)が低下し、手ごろな価格の物件を見つけにくくなっているためとみられる。

一方、季節要因を無視できる前年比は22.9%増となり、12カ月連続で前年水準を上回った。

 NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ヤン氏は6月の販売件数の増加について、住宅在庫(供給)不足が続いている中で、「ここ数カ月、住宅着工件数や持ち家の売却件数が増え、住宅供給がやや改善したため」とした。今後の見通しについては、「住宅価格は在庫がタイトなため下がりにくいが、年末までに価格上昇ペースは鈍化する見通しで、中古住宅の販売はパンデミック前を上回る速いペースで増加する」と楽観的にみている。

 住宅供給の過不足感を示す6月時点の未販売住宅(在庫)は前月比3.3%増の125万戸と4カ月連続で増加。これを6月の販売ペースに換算した在庫水準は2.6カ月分と、前月の2.5カ月分や4月の2.4カ月分や3月の2.1カ月分、2月の2カ月分から5カ月連続で上昇した。このうち、一戸建て住宅の在庫は前月比3.8%増の108万戸と、前月の104万戸に続いて、2カ月連続で100万戸台となった。

 ただ、6月の在庫量(戸数ベース)は前年比18.8%減と、統計開始の82年以来38年ぶりの低水準。中古住宅市場が深刻な在庫不足でタイトとなっているため、消費者は新築市場にシフトする傾向を一段と加速させている。

 中古住宅の販売ペースは、販売物件が6月中に市場に残っていた期間が17日間と、前月と変わらなかった。6月中に販売された物件のうち、全体の89%(5月も89%)が市場に出てから1カ月弱で販売されていることになる。

 地域別販売件数を見ると、全体の4割以上を占め、最もウエートが大きい南部は前月比横ばいの259万戸と、4カ月連続の減少に歯止めがかかった。北東部は同2.8%増の74万戸と、6カ月ぶりに増加。西部は同1.7%増の120万戸と4カ月ぶりに増加した。中西部は同3.1%増の133万戸となった。

 一方、中古住宅価格は中央値で前月比3.7%上昇の36万3300ドルと5カ月連続で上昇し、過去最高値を更新した。主力の一戸建ては前月比3.9%上昇。住宅供給不足が続いているため、一つの物件に複数の買い手が殺到し、住宅価格に上昇圧力がかかっている。

 住宅価格が低下しない要因の一つに、格安なフォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)物件やショートセールズ(フォークロージャー手続きに進む前の早い段階で債務者と債権者が協議して住宅を任意売却)物件などのディストレスト物件の供給が依然細っていることがある。5月のディストレスト物件の販売比率は1%弱と、前月と変わらなかったが、1年前の3%を下回っている。

 一方、住宅供給不足と高水準の住宅価格を反映し、6月の新規住宅取得者の比率は31%と、前月と変わらなかったが、1年前の35%を下回った。住宅購入者のアフォーダビリティが弱まっており、春の繁忙期に住宅購入者は厳しい住宅購入競争に晒されている。販売の回復は下期(7-12月)、特に年間を通じ、住宅販売のピークを迎える今夏になるとの見方がある一方で、住宅ローン金利が過去最低水準まで低下していることや、パンデミック中の貯蓄増加により、今後、住宅購入者の市場離れが抑えられ、市場が冷め切るのが食い止められるとの見方もある。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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