異業種提携で成長加速へ――リソー教育の意気込み
2021/8/3 9:00
学習塾大手のリソー教育(4714)は主力の個別指導受験塾「TOMAS(トーマス)」を中心に、大幅な生徒数の増加ペースを維持している。モーニングスターのインタビューで同社の平野滋紀社長は、異業種提携による新たな成長ビジョンへの意気込みを語った。
22年2月期はV字回復、TOMASなど生徒数拡大
リソー教育は2022年2月期に、コロナ禍で収益が落ち込んだ前期からの業績のV字回復を見込む。先月発表した第1四半期(3~5月)は、連結経常損益の赤字幅を1.6億円(前年同期は13.2億円)に急縮小させた(学習塾業界は受験生が3月に退塾するため第1四半期は生徒数が年間で一番少ない時期となる)。売上高はコロナ前の20年2月期第1四半期と比較しても16%増加した。
第1四半期末(5月末)の生徒数はTOMASが20年5月末比で17.5%拡大したほか、プロ家庭教師の名門会が30.1%増、小学校受験指導の伸芽会が26.8%増となった。新校に加え、既存校でも生徒数が伸長。さらに、グループの従業員とその家族、講師、生徒の保護者らを対象とする新型コロナウイルスワクチンの職域接種を実施し、生徒が安心して臨める学習環境の整備も進めている。
好調な足元の業績を受け、同社はこのほど通期の経常利益の見通しを期初の25億円から28億円(前期比2.3倍)に上方修正した。売上高は前期比17%増の295億円(期初予想は290億円)を予想している。
ヒューリック、コナミスポーツと3社連携
こうした中、同社は異業種と連携した市場開拓も急ぐ。20年9月~21年6月にかけて、不動産開発のヒューリック(3003)、スポーツクラブ大手のコナミスポーツ(東京都品川区)、KDDIまとめてオフィス(東京都渋谷区)との業務提携を相次いで発表した。KDDIまとめてオフィスは、KDDI(9433)の通信サービスを基盤にクラウドやオフィス機器のサービスを、学校を含む法人向けに提供する企業だ。
ヒューリックからは駅前の優良物件の紹介を優先的に受け、新校の積極展開を加速する。また、「既存校の拡大リニューアルのための物件確保や、グループのブランドを同じビルに集めた旗艦校の新設についても同社との提携を生かしていく」(平野社長)。
コナミスポーツに関しては、伸芽会の受験指導付き長時間型学童保育の「伸芽'Sクラブ学童」と共同で、コナミスポーツの施設に伸芽'Sクラブ学童が入る新ブランド「コナミスポーツ 伸芽'Sアカデミー」を手掛ける。保護者の間に広がる文武両道のニーズを満たす試みで、今後3年間で品川や横浜など首都圏にあるコナミスポーツの20施設へ展開する予定。「24年には伸芽'Sクラブ学童の校舎が現在の15校から35校へ倍増する計画」(平野社長)だ。
GIGAスクールでは300校ターゲットに
学校におけるIT環境を整備する政府の「GIGAスクール構想」に絡んでは、KDDIまとめてオフィスとのタッグで需要を取り込む。ハード面をKDDIまとめてオフィスが担い、ソフト面では学校内個別指導のスクールTOMASを設置することで進学実績の向上を支援。学校でのITを活用した教務運用までを引き受ける。既に両社が顧客とする学校の相互紹介も進め、「既存契約校とこれからの新規契約含めて約300校をターゲットとしている」(平野社長)。
また、リソー教育はヒューリック、コナミスポーツとは3社提携にも踏み切った。3社一体で幼児教育業界の市場開拓と再編成を図る。そうした中で開業を目指す「こどもでぱーと」は、教育サービスのほかスポーツ、クリニック、カフェなどさまざまなサービスが受けられる教育特化型ビル。リソー教育は、長時間型英才託児の「伸芽'Sクラブ託児」から伸芽'Sクラブ学童、TOMAS、さらには医学部受験専門塾やマンツーマン英語スクールまで幅広く提供。各ブランドを集めることで、子供が1歳から長く通える施設づくり貢献する。
プライム市場適合
こどもでぱーとは保護者にとっても、塾や習い事などの送り迎えを一本化できるメリットがあり、潜在需要は大きい。現在3社で場所の選定や導入サービスなどの協議を重ねており、22年に第1棟をオープンする見通し。29年までに首都圏で20棟の展開を目指す。
リソー教育は24年2月期に売上高355億円、経常利益37億円を計画する。学習塾をはじめとする教育サービスの生徒数拡大に加え、より長期的には異業種との業務提携による新事業の本格化による成長加速も期待される。また、22年4月にスタートする東証の新市場区分においては、最上位のプライム市場への適合の結果を受けている。
(写真:123RF)
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