RBA、政策金利0.10%据え置き―感染再拡大も資産買い入れ縮小を継続

経済

2021/8/3 17:35

<チェックポイント>

●資産買い入れ規模変えず、11月まで弾力的に運用継続へ

●3年国債利回り目標を延長せず24年4月満期で据え置き

●「インフレ率が2-3%の物価目標レンジになる24年まで利上げせず」

 豪準備銀行(RBA、中銀)は3日の理事会で、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR、銀行間取引で使われる翌日物貸出金利)の誘導目標を過去最低水準の0.10%に据え置いた。市場の予想通りだった。

 RBAは20年11月会合で、新型コロナのパンデミック(世界大流行)の悪影響が現れ始めた3月以来、8カ月ぶりに利下げを決めたが、20年12月会合で据え置きに転換。これで据え置きは8会合連続となる。

 市場が注目していた、QE(量的金融緩和)の買い入れ規模の縮小(テーパリング)については、国債などの資産買い入れ規模を変えず、9月以降、買い入れペースを現在の週50億豪ドル(月200億豪ドル)から同40億豪ドル(同160億豪ドル)に減速するとした、前回7月会合の決定を据え置いた。また、QEを11月中旬まで継続する方針も変えなかった。RBAは今回の会合後に発表した声明文で、「資産買い入れペースの弾力的運用を維持する」とした上で、「RBAは引き続き、QE政策について、経済状況やデルタ株の感染状況、完全雇用と物価安定の2つの目標の達成度合に照らし、見直しを行う」とした。

 資産買い入れの弾力運用は現在のインフレに対しハト派(景気後退リスク重視の金融緩和派)スタンスを維持しながらもQEの弾力的な運用により景気刺激一辺倒からテーパリングに踏み出したことを意味する。RBAは雇用の最大化と賃金上昇率の3%上昇という2つの目標の達成により、インフレが物価目標の2-3%上昇になるまで景気を刺激したい考えだ。

 市場では、デルタ株感染が急拡大し、ロックダウン(都市封鎖)による経済への悪影響が懸念されていることを受け、RBAはテーパリング計画を白紙に戻し、9月以降、QEの買い入れペースを現在の週50億豪ドルに据え置くと見ていた。

 景気見通しについては、「デルタ株の感染拡大により、一時的に7-9月期は景気回復ペースが鈍化する」としたが、「豪州経済は22年から力強い回復を見せる」とし、デルタ株感染の経済への影響は一過性との見方を示している。

 RBAは今回の会合でも3年国債の利回り達成目標を0.1%近辺とする方針を据え置いた。また、3年国債利回り目標を24年4月満期に据え置いた。

 インフレ見通しについては、前回会合時と同様、「インフレと賃金は上昇が予想されるが、徐々に緩やかな伸びにとどまる可能性が高い」とし、その上で、経済予測を引用し、「コアインフレ率は22年が1.75%上昇、23年半ばまでに2.25%上昇になる」とし、前回会合時の「23年半ばまでに2%上昇」の予測をやや引き上げた。

 今後の金融政策の見通しについては、前回会合時と同様に、「インフレが持続的に2-3%の物価目標の範囲内に収まると確信するまで、政策金利を引き上げない」とのフォワードガイダンス(金融政策指針)を維持した。

 ロウRBA総裁は賃金と失業率を金融政策の前面に出し、失業率が5%を下回ることが賃金の上昇を引き起こすとの考えを示している。また、同総裁はインフレ率が2-3%上昇の物価目標を持続的に達成するには賃金が現在の2倍の3%を超えるペースで上昇する必要があると指摘している。

 最新の6月失業率は4.9%となり、8カ月連続で低下(改善)したが、市場では最近の失業率の低下は海外からの出稼ぎ労働者が国外に流出しているためで、国内に滞在し続けていれば失業率は2.5ポイント高くなったとみている。このため、市場ではRBAは景気をV字回復させることにより、賃金と期待インフレの上昇を目指し、雇用市場を過熱化させるハト派スタンスを維持するとみている。また、ロックダウンにより、24年まで利上げしないというRBAの方針は依然有効とみている。

 次回会合は9月7日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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