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2021/9/2 9:30

【米国株】テーパリングでGAFA資金流出に注意

 8月27日にオンライン形式で開催された米ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムで、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は「資産購入プログラムのテーパリング(金融緩和の縮小)開始は年内が適当」と述べた。一方で、「テーパリング開始が利上げ時期の直接的なシグナルとはならない」ともしている。

 テーパリングに関して、FRBのバランスシートの月末残高は今年7月に7兆7369億ドルと2019年12月の3兆8078億円から2倍以上に拡大した。緩和マネーが行き場を失う中で、悪材料に対しても、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のような時価総額の大きい大型IT株が「外部環境に左右されずに安定して成長できる銘柄」として過剰流動性マネーの受け皿となっている。

 裏を返せば、テーパリング開始により、バランスシート拡大ペースの減速が大型IT成長株への資金流入を鈍らせることにつながる面がある。バランスシート「縮小」ではなく「増加の減速」である限りは影響が限られるとみられるものの、GAFAなど大型IT銘柄はテーパリング開始の影響を受けやすいものとして要注意だろう。

フィリップ証券

 WTI原油先物価格は8月20日まで7営業日続落となったが、週明け8月23日以降は反転上昇。当該限月の前月25日(非営業日ならば25日の前営業日)の3営業日前が最終取引日となるため、9月限の取引最終日は8月20日だった。また、8月限取引最終日7月20日に対し、7月終値の月内安値を7月19日に付けるなど、期近物の取引最終日に絡むポジション調整が推察される。(画像クリックで拡大版にジャンプ)

 同様の動きは3月や5月にも見られた。そして、NYダウにおいても8月19日に3万4690ドルの安値を付けた後に反転上昇したほか、7月19日安値の3万3741ドル、5月19日安値の3万3473ドルの後に反発するなど、原油需要の性質が景気敏感株の構成比率が高いNYダウに影響を与えている可能性がある。

【香港株】大手商業国有銀の中間決算から見る中国銀行株

 8月30日までに中国4大国有商業銀行の2021年1~6月決算(中間決算)が出そろった。中国4大商業銀行とは、中国工商銀行(インダストリアル・アンド・コマーシャル・バンク・オブ・チャイナ:ICC)、中国建設銀行(チャイナ・コンストラクション・バンク)、中国銀行(バンク・オブ・チャイナ)、中国農業銀行(アグリカルチュラル・バンク・オブ・チャイナ)を指す。

 これらの銀行は、1997~98年のアジア金融危機をきっかけに、銀行部門の不良債権処理の本格化に伴って株式上場を視野に入れた株式制への再編によって誕生した。

 4大国有商号銀行で総資産の上位2行(中国工商銀行と中国建設銀行)の中間決算を、アセアン(東南アジア諸国連合)の銀行の中でも時価総額首位を争うシンガポールのDBSと日本のメガバンク首位の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の直近決算と比較すると、以下の特徴が挙げられる。

 収益面では、純金利マージンが2%台と高く、営業収益に占める純金利収益の比率が80%近くと高い点である。費用面では、経費率が20%台前半と低い点が挙げられる。ただし、与信関連費用が営業費用を上回っており、両者合計費用の営業収益に対する比率では2行とも50%近辺と、DBS(約43%)よりも高い。

 一方で、DBSと同様に経費率が非金利収益の構成比率とほぼ同水準である。また、DBSや三菱UFJと比較すると、与信関連費用の変動性が、前年同期比1カタ台前半の減少率と小さい点も特徴として挙げられる。

 収益および費用面で上記の傾向が継続するならば、8月31日終値基準での税前市場予想年配当利回りが、中国工商銀行が7.33%、中国建設銀行が6.92%と高配当利回り投資としては魅力的な水準と言えよう。

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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