<中原圭介の相場観>海外投資家が狙っていた日経平均急騰のシナリオ
日本株の急騰がすさまじい。前回の8月31日の当欄では月末安のアノマリー(説明のつかない法則)を打ち破った同日が株価の大きな転換点になるかもしれないと申し上げたが、正直なところ、ここまでの動きは想定していなかった。
突然の菅政権退陣で早まる
思い描いていたのは、日経平均株価が上値抵抗ライン(3月18日の3万485円、4月6日の3万208円、5月10日の2万9685円の3点を結んだ線)に1回は押し戻され、菅首相が自民党総裁選で敗れた後に再上昇し2万9000~3万円の水準に達するという展開だった。しかし、菅首相が戦う前に勝負を降りたことで、上昇が早まった形だ。
そもそも菅政権の退陣によって株価が急騰するタイミングは、多くの海外投資家が待ち構えていたものであった。それが9月3日の昼休み中に突然訪れたので、海外投資家は真っ先に先物主導(主としてアルゴリズム取引)で急騰を仕掛けたため、他の投資家層を一歩でも出し抜くことができたはずだ。
6日終値の時点で、日経平均は上値抵抗ラインを大きく超えて、3万円に達しようかという勢いだ。これで今年の安値は8月20日の2万6954円で固まったとみてよいだろう。
高値更新なら3万2000円も
次に注目すべきポイントは取引時間中の年初来高値(3月18日の3万485円)を超えてくるかどうか。ここで頭を抑えられるようだと、当面は2万7000~3万500円のボックス圏が意識される。一方、年初来高値を超えてくるような展開になれば、買いに回転が利くことで3万2000円あたりまで期待できると思う。おそらく、バリュー(割安)株、グロース(成長)株の区別なく買われるのではなかろうか。
9月3日に発表された米8月雇用統計は結果が芳しくなかったものの、テーパリング(金融緩和の縮小)の先送りが意識されたこともあり、ナスダッス総合指数が最高値を更新した。しかし、米国株(S&P500)のPERは21倍台と過去の平均を大きく上回り、どこかで健全な調整が必要だと考える。
これに対して、日本株(TOPIX<東証株価指数>)のPERは15倍台と割高感はない。今後、米国株が割高感から調整を強いられた時、日本株がどれだけ耐性をみせるのか、その点も注視していきたいところだ。意外に打たれ強くなっているかもしれない。
(アセットベストパートナーズ 中原圭介)
(写真:123RF)
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