英中銀、政策金利0.1%据え置きを決定―2委員が量的緩和減額を提案

経済

2021/9/24 10:56

<チェックポイント>

●量的金融緩和、2委員が350億ポンド減額を提案

●4-6月期GDP見通しを前期比2.1%増に下方修正

●インフレ率は10-12月期に4%上昇超えると予想

 イングランド銀行(BOE)は23日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を過去最低水準の0.10%に据え置くことを全員一致で決めたことを明らかにした。市場予想通りだった。

 非伝統的な金融緩和措置である量的金融緩和(QE)は、総額8950億ポンド(8750億ポンドの国債買い取り枠と200億ポンドの投資適格級の社債買い取り枠)とする資産買い入れ規模を7対2の賛成多数で据え置いた。前回会合から反対委員が1人増え、インフレリスク重視のタカ派に傾いた。

 会合後に公表された議事抄録によると、タカ派のマイケル・サンダース委員に加え、新たにデイブ・ラムスデン委員がQE据え置きに反対し、いずれも国債買い取り枠を8400億ポンドに350億ポンド減額することを提案した。

 QE据え置きは市場の想定通りだったが、BOEがどの程度、タカ派にシフトするかに注目していた。BOE内でタカ派の意見が増えれば、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)の議論が始まる可能性が高まるからだ。今回の会合でタカ派の2委員がQEの巻き戻しを支持したことを受け、市場ではBOEは早ければ22年3月に0.15ポイントの利上げを開始し、22年末までに2回の追加利上げを織り込み始めた。

 BOEはテーパリングについて、議事抄録で、「2%上昇の物価目標が持続的に達成されるか、または、経済全体の余剰生産能力(spare capacity)が解消されない限り、金融引き締めは行わない」としたフォワードガイダンス(20年下期に採用)の条件が満たされているかどうかについては意見が分かれている」とし、タカ派の勢いが増したことを明らかにした。

 このガイダンスの見直しについて、BOEは前回の会合で、ベイリー総裁がQEプログラムで買い入れた保有国債の減額開始のガイダンスとなっている、「政策金利が1.5%に達した時点」というルールを変更し、1.5%から0.5%に引き下げる考えを初めて示している。市場では政策金利が0.5%に上昇した時点で、BOEは満期を迎えた保有国債の償還金の再投資を停止し、政策金利が1.00%に達すれば、BOEは国債の一部を市場に売り戻すことを検討すると予想している。

 ガイダンスの見直しの背景には現在の英国経済がスタグフレーション(景気後退にもかかわらず、インフレ率が上昇する状態)の兆候が強まっていることがある。英国経済がパンデミックから回復し、8月のインフレ率は前年比3.2%上昇と、24年ぶりの高い伸びとなる中、BOEは今回の会合で、「主にエネルギーと製品の価格上昇により、短期的にさらに上昇し、10-12月期には4%上昇をやや超える」と予想した。

 しかし、インフレ加速懸念が短期的に強まった一方で、景気鈍化も懸念材料となっている。BOEは7月のGDP(国内総生産)が前月比0.1%増と、6月の同1%増から急速に減速し、景気回復が止まったことを受け、今回の会合で7-9月期の成長率見通しを前回8月予想時の前期比2.9%増から2.1%増に約1ポイント下方修正した。

 BOEは声明文で、「雇用市場では失業率が5-7月期に4.6%に低下し、求人数が増加する一方で、一時帰休中の従業員が7月でまだ170万人となっている。一時帰休者の給与支援制度の9月末終了に伴う影響や熟練労働者不足など先行き見通しの不確実性が高まっている」とし、その上で、「金融政策の変更とその効果がインフレに及ぶまでの時間的なずれを考えると、適切な金融政策の決定は目先の一過性で終わる可能性が高い要因に基づくよりも中期的なインフレやインフレ期待の見通しに基づくべきだ」とし、インフレ加速は一時的との判断を改めて強調した。

 BOEの次回会合は11月4日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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