<新興国eye>カンボジア、国家デジタル経済社会評議会を設立

新興国

2021/9/24 12:21

 9月7日、カンボジアのシハモニ国王は、国家デジタル経済社会評議会(National Digital Economic and Social Council)の設立に関する勅許に署名しました。

 この評議会では、カンボジアのデジタル経済社会開発を実現するために、ビジョンや方針を決定し、その実現に必要な政策や予算・人員等を調整していくこととなります。議長は、フン・セン首相で、副議長として内務大臣、防衛大臣、経済財政大臣、工業・科学・技術・革新大臣、郵政電気通信大臣が指名されています。このほか20名の閣僚と国家最高経済評議会議長、中央銀行総裁等がメンバーとなっています。また、同評議会の下部機関として、デジタル経済ビジネス委員会、デジタル政府委員会、デジタル安全委員会が設置されます。

 なお、国家デジタル経済社会評議会は、21年6月に発表された「カンボジアデジタル経済社会政策枠組2021-2035」に沿って設立されたものです。

 副議長のオウン・ポン・モニロット経済財政大臣は、「デジタル経済社会政策は、新型コロナ終息後の経済回復に欠くことのできない政策の一環となる。デジタルインフラの開発、外国直接投資の誘致、新規ビジネススタートアップの振興等を実施していきたい。」と述べています。

 カンボジアの主力産業は、労働集約型軽工業(縫製等)から国際的サプライチェーンを活用した労働集約型部品産業へと発展しつつあります。多くの国では、この後の発展段階として、自動車や家電、鉄鋼等の重厚長大産業へと進むのですが、カンボジアの場合は、周辺に強力なライバル国が多いため、カンボジア産業開発政策では、これらの産業をスキップして一気に「イノベーション産業」を目指したいとしています。

 ITを活用したフィンテックや医療サービス等がカンボジアで芽吹き始めており、デジタル経済社会政策がこうした動きをさらに加速していくものと期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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