今投資家が知っておきたい「中国恒大ショック」と、暴落時におさえておきたい配当貴族銘柄

現在市場は中国恒大問題により不安が高まっています。
今回はそもそも恒大問題がどのようなリスクを抱えているのかについて解説しながら、そうした局面においても過去の実績から安定感があり、長期保有に向いた高配当銘柄を紹介します。
中国恒大問題とは
今回問題となっているのは中国恒大集団(エバーグランデ)のデフォルト、すなわち債務不履行のリスクが高まっていることです。
ここではその問題を少し具体的に解説します。
まずそもそも中国恒大集団とは、1996年広東省で創業した不動産大手会社です。
この会社の負債総額は現在なんと1兆9,700億元、日本円にして33兆円ほどにもなります。
これは中国のGDP総額の2%にも上ると言われており、一国のGDPを軽く超えるほどの規模となります。
後述しますが、もちろんこの規模の債務不履行、破綻が現実のものとなればその影響は中国国内にとどまらず世界中に及びます。
今回複数の社債利払い日が迫ったことでその破綻に対する不安が高まったことから世界的に株安となりました。
今回注目を集めているのは、中国共産党政権がそれを国家を挙げて救済するかどうかということです。
恒大集団を公的に救済するとなると、それは富裕層を救済するのと同じですから世論の反発は免れない一方で、救済しないとなるとリーマンショックに匹敵するともいわれる景気悪化が予想されています。
それでは、それぞれの場合にグローバル市場、とりわけ米国市場にどのような影響が及ぶのかを考えていきたいと思います。
今後の展開
でははじめに、中国政府がかつてリーマンショックの時の米政府のように恒大集団を救済せず、経営破綻が起こった場合の最悪のシナリオについてみていきます。
初めに影響を受けるのは、中国国内の関連建設会社や同社が株の多くを保有している銀行、そして恒大集団から家などを買った消費者です。
中国国内に連鎖的に不良債権が積み上がり、破綻の波が押し寄せ、それが向かうのはグローバル金融市場となります。
中国への投資額が大きい欧米金融機関は、大きなダメージを受けることとなるでしょう。
特に米国工業企業の売上高のうち10%を中国での売り上げが占めているとも言われており、他の業種よりも警戒する必要があるでしょう。
さらに不動産大手への信用不安も連鎖していくこととなります。
今見たのは最悪のシナリオとなりますが、専門家筋ではそうなる可能性は低いと言われています。
たとえばFRBのパウエル議長は米国企業への直接的な影響は限定的なものだとしています。
それはシンプルに言えば恒大集団はあまりにも巨大なため中国政府も潰すわけにはいかないからです。
上で書いたような中国全体にショックが波及するのを防ぐためには、政府も多少の世論の反発や一時的な金融・不動産の停滞は受け入れるだろうということです。
では救済が実行されるとどうなるでしょうか。
恒大集団が公的資金で救済されるとなると、恒大集団はもちろん関連する建設会社や金融会社に発生する損失は相当抑えられ、ドル建ての債務も履行されることとなります。
多少中国景気は減速し、それに引きずられる形で米国経済も減速することは考えられますが、中国への投資額が多い企業や中国での売上高が多くを占める企業でもそれほど大きい損失は発生しないと考えられます。
救済する可能性は高いとみられていますが、それも中国共産党の決定次第となります。
今後も注視し、最悪のシナリオに備えておくことも必要かもしれません。
今回チャンスとなる銘柄
2021年9月下旬、恒大不安から米国株は大幅に下落しました。
20日に急落、2020年11月以降NYダウ平均は100日移動平均線を上回り続ける強気相場が10カ月近くにわたって続いていましたが、今回それを割り込むかたちとなりました。
しかし、不安が高まり、全面安となっている現在こそ狙うべき銘柄というのが存在します。
それは「配当貴族」と呼ばれる25年連続で配当を増加させてきたS&P500銘柄のことで、現在65銘柄が当てはまります。
この配当貴族銘柄の強みは、過去の金融危機やコロナショックのような経営環境の悪化に対しても、着実に配当を増加させ続けてきた企業であるということです。
それはすなわち株主を大切にしている企業であるともいえるでしょう。
収益指数を見てもS&P500に比較するとここ20年で2倍以上となっており、非常に安定感があります。
配当貴族指数の上位銘柄を見ていくと、以下のような企業が名を連ねます。
〇ジョンソン・エンド・ジョンソン
〇ウォルマート
〇プロクター・アンド・ギャンブル
〇コカ・コーラ
〇エクソンモービル
〇アボットラボラトリーズ
〇ペプシコ
〇AT&T
〇アッヴィ
〇シェブロン
上位5銘柄についてより詳しく見ていきましょう。
■ジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>
JNJはニュージャージー州に本社を置く医療・ヘルスケア企業です。
衛生用品のイメージが強いですが医療機器の製造が主であり、機器によってはトップシェアを誇るものもあります。
同社の直近配当利回りは2.60%、5年間の平均利回りは2.70%となっています。
連続増配年数は58年となっており、これまで着実に増配を続けてきました。
今回紹介するほかの企業と比較しても、非常に安定感のある業績が魅力です。
また、ヘルスケア企業ということもあり、下落局面に強いのも特徴の一つです。
先進国では高齢化が、新興国では所得水準の上昇に伴う医療支出の増加が後押しし、堅調な成長を続ける見通しです。
■ウォルマート<WMT>
WMTは米国50州でディスカウントストアやスーパーマーケットを経営する大手小売業者です。
同社の直近配当利回りは1.55%、5年間の平均利回りは2.07%となっています。
連続増配年数は48年となっており、これまで着実に増配を続けてきました。
株価は着実に成長を遂げており、S&P500と同等程度の緩やかな上昇が続いています。
そのため配当利回りは低下しています。
生活必需品の販売が主なので収入には安定感があり、また人口増加に押され小売市場は拡大する見通しもあります。
■プロクター・アンド・ギャンブル<PG>
PGはオハイオ州に本社を置く一般消費財メーカー世界最大手で、ヘアケア用品や洗剤といった家庭用品を製造、販売しています。
有名ブランドを多数保有しており、多くのシェアを占めています。
同社の直近配当利回りは2.46%、5年間の平均利回りは2.83%となっています。
連続増配年数は64年となっており、これまで着実に増配を続けてきました。
先ほどと同様に生活必需品であるため非常に安定的な収益力があり、またキャッシュフローや利益などで同業他社を上回っています。
生活必需品市場は成熟しているため、あまり今後急激な成長に期待できるというわけではありませんが、安定感は素晴らしいものがあります。
■コカ・コーラ<KO>
KOは言わずと知れた世界最大の飲料メーカーです。
同社の直近配当利回りは3.14%、5年間の平均利回りは3.28%となっています。
連続増配年数は58年となっており、これまで着実に増配を続けてきました。
配当利回りはこれまで3~4%を推移しています。
株価は長期的に緩やかな成長を遂げていますが、S&P500はアンダーパフォームしています。
同社の強みは圧倒的かつグローバルなブランド力とマーケティング力であり、また、飲料市場もまた生活必需品の分野となるため、安定感があり人口増加の恩恵を受けられます。
WMTやPGと同様長期的な成長に期待できます。
■エクソンモービル<XOM>
XOMはテキサス州の本社を置く総合エネルギー会社です。
株価は低迷が続いており、S&P500をアウトパフォームしています。
同社の直近配当利回りは5.82%、5年間の平均利回りは4.72%となっています。
1983年から続く連続増配年数は39年となっており、これまで着実に増配を続けてきました。
石油スーパーメジャーの一角として世界4位を占める同社に、今後石油の消費量が増加していくとの予想は追い風となります。
配当目当てで長期的に保有しながらそうしたエネルギー需要の増加にも期待したいところです。
まとめ
今回は中国恒大問題を開設するとともに、そうした不安な局面でも比較的安心感の高い銘柄を紹介しました。
5銘柄はいずれも過去に安定して増配を続けてきた株主を重視する企業です。
配当利回りが2%を超える銘柄も多く、特に生活必需品の分野などでは非常に安定感のある企業が目立ちます。
今回の全面安を長期投資のきっかけとして、配当貴族を目指すのも良いのではないでしょうか。
https://www.morningstar.co.jp/redirect/kabushiki_210122.htm
※この記事はモトリーフールジャパンからの許諾を受けて掲載しており、著作権は情報提供元に帰属します。
(イメージ写真提供:123RF)

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