ヒトコムHD、デジタル領域への取り組み注力、加速するクライアントのDX化を支援

株式

2021/10/14 10:30

 ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス<4433.T>が21年8月期決算説明会動画を公開した。冒頭、代表取締役社長グループCEO(最高経営責任者)を務める安井豊明氏は、空港水際対策支援業務や軽症者受入ホテル支援業務などといった同社の事業リソースを活用したコロナ禍での取り組みを紹介。東証の新市場区分における「プライム市場」の上場維持基準への適合が確定したことから、取締役会で選択申請を決議したことも明らかにした。

 13日に発表した21年8月期の連結決算は、売上高が前期比18.8%増の842億2500万円、営業利益が同52.0%増の47億8700万円と、従来計画をやや上回り、コロナ禍という逆風が吹き荒れるなか、2ケタ増収増益に過去最高益を更新した。

 冒頭で述べた空港水際対策支援業務や軽症者受入ホテル支援業務といった感染対策関連事業の業務受託が拡大し、主力のアウトソーシング事業が大きく成長。デジタル事業分野の主力事業であるEC(電子商取引)運用受託事業が既存受託サイトに加えて新たに立ち上げたサイトも好調に推移し、「前半戦を中心に業績をけん引した」(安井CEO)。また、「鬼滅の刃」など有力ライセンスを活用したファッションホールセール事業も、郊外型の店舗を中心に非常に好調。インバウンド、ツーリズムなどは不振だったが、充実した事業ポートフォリオでこれをカバーした。

 費用面では、積極的な広告宣伝による広告費や売上増による変動費の増加で販売管理費が膨らんだものの、売上高の増加で増益を確保。雇用調整助成金を営業外収益として計上したことに加え、特別損失が前期ほど膨らまなかったこともあり、純利益は同2.0倍の27億7400万円となった。21年8月期の特別損失は、6月に子会社化したUsideU社の株式評価損や貸倒引当金繰入を一括計上したためで、安井CEOは「このM&A(企業の合併・買収)による大きなリスクはほとんどなくなった」としている。

 22年8月期の連結業績予想については、「収益認識に関する会計基準」を適用。ECサイト運営受託事業において、EC上の商品売上高と商品仕入高を相殺し、手数料部分のみを売上計上する。これに伴い、売上高予想が585億9000万円と見かけ上は目減りするが、前期の売上高を同会計基準に適用したものと比較すると4.4%増となる。前期と比較可能な従来通りの総額売上高ベースは前期比7.2%増の902億7200万円となる。利益への影響はなく、営業利益予想を50億円(同4.4%増)、純利益予想を30億円(同8.1%増)とした。また、配当は第2四半期末・期末ともに12.5円の年間25円(前期は24.5円)を予定している。前期は上場10周年記念配当3円を含んでいるため、普通配当ベースで考えれば、実質3.5円の増配となる。

 日本経済は内需、民需、個人消費と、ヒトコムHDと関係ある指標に限定すれば、22年から大きく改善する見通しとなっているが、安井CEOは「新年度もしくは年明けごろには期待が持てるようなところが見えてくる」と期待。ワクチン接種ペースの加速やワクチンパスポート等の導入により、経済復興の動きなどで事業環境は改善するとして、スポーツ入場者数の増加や、国内旅行の復活、外食産業の回復、コンサートなどのエンターテインメントの復活、都心部への人の流れの回復、空港ビジネスや海外旅行の復活、インバウンド旅行者の増加などがヒトコムHDにとって追い風になる。

 デジタルマーケティングへの取り組みについては、総額売上高ベースでデジタル関連の売上高が全体の49.8%(前期47.7%)に向上する見通し。コロナ禍で事業環境が大きく変化するなか、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が加速すると考えられるが、人手不足も予想され、“ヒト力”を提供することでクライアントのDX推進をサポートする。そのために、新たに「デジタルソリューション営業部の新設や、本社社屋内にDXベンチャーを集約する「DXステーションフロア」を開設。さらに6月に子会社化したライブコマース企業Mofflyが使用する専用スタジオをオープンし、D2Cブランドの営業支援も本格化する。6月に子会社化したUsideUでのオンライン接客システムの提供、ECサイト運用支援やインサイドセールス事業などの拡大も図る。加えて、物流業界への本格参入も検討している。

 安井CEOは「3歩、4歩進むのではなく、常に半歩先でしっかりと実績を積み、(クライアントに対する)実現可能なDX支援を提供してリアルなマネタイズ化を目指す」と述べた。

提供:モーニングスター社

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